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2008年10月

2008/10/31

冬の気配

Moomin 昨日にひきつづき、B-ぐるに乗ってラクーアへ。兄嫁Nさんの買物につきあうだけのつもりだったのに、私まで散財してしまう。来月の請求が恐ろしい。

キャッシュバックキャンペーンでもらった1000円を使って、ムーミンカフェでキッシュを食べ、ふたたびB-ぐるに乗る。夕暮れのなかを走るバスに揺られて、うつらうつらしている間に、すっかり夜の帳が下りていた。

バス停でNさんと別れ、図書館で恋人と落ちあう。家にカレーの残りがあったことを思い出し、近所のインドカレー屋さんでナンとチキンティカを買って帰る。チキンティカは舌が痺れるほど辛く、冷たいお茶をたくさん飲みながら食べた。

あちこち駆けずりまわった10月も、今日でおしまい。あっという間に冬の気配が忍びよってきた。

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2008/10/30

ぐるぐる背表紙

朝のうちに仕事を片づけてしまって、神田古本まつりへ出かける。縁あって、文京区よりコミュニティバス「B-ぐる」の記念乗車券をたくさんいただいたので、初めてその小さなバスに乗ってみた。環状のようでいて、実は乗換えが必要だと知ってびっくり。始点でもあり、終点でもある文京シビックセンターでバスを降り、そこから歩いて神保町へ向かう。

歩道に並べられた本棚を、端から端まで眺める。ずらり並んだ背表紙を追いつづけていると、だんだん疲れてきて、しまいにはほんとうに本がほしいのだかなんだかわからなくなってくる。

夕方になっておなかがすいたので、餃子を食べ、ギターの弦を買って、後楽園のほうまで歩いて戻り、ふたたびB-ぐるに乗って帰る。

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2008/10/29

初冬の独演会

古本市の年表を作り、資料をファイルにまとめる。今夜、千駄木のブックカフェにて月に一度開かれる集まりで、恋人と主催する古本市についてしゃべることになっているのである。

おおかたの準備が整ったころになって、雨が降り出した。おまけに気温もぐっと下がる。大勢を前にしゃべるような度胸も技量もないけれど、誰も来なかったらさみしいなぁとぐずぐず考えているうちに、雨があがる。そのすきに自転車で会場のカフェへ行ってみると、すでにお馴染みの顔がちらほら。最終的には12名のひとが集まってくれて、カフェの椅子もすべて埋まる。うれしい。

それで気を大きくしたのか、30分の予定をはるかに超えてしゃべってしまった。こんなにも寒い平日の夜、わざわざ集まってくれたひとたちに、少しでも楽しんでもらえたらならいいのだけれど。

勝手にしゃべって勝手に楽しんで、日付が変わるころに帰宅。熱いお湯にざぶんとつかる。

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2008/10/28

ブラックチューズデー

昨日町をふらついたツケがまわってきて、一日仕事漬け。

日経平均株価が一時7000円台を割ったと聞いて、びっくりする。けれど円高傾向はつづいている。よく晴れた空を見あげて、円高のうちに海外へ行けるとしたらどこへ行こうと、詮ないことを考える。

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2008/10/27

他人事ならぬ

Jinbocho 仕事の合間に、近所の書店で立ち読みをしたり、恋人のSRでふらり神保町まで出かけてみたりする。「神田古本まつり」初日を迎えた神保町は、たくさんのひとでにぎわっていた。その様子を見ながら、初日がお天気に恵まれてよかったと心から思う。まったく関係がないとはいえ、「古本市」と聞くと、とても他人事とは思えないのである。

恋人が授業で使うというので、無料で配布している神保町の地図をもらって帰る。開いてみれば、以前のものから地図のレイアウトが大幅に変わっている。きっとこれを変更するのにも、喧々諤々の議論が交わされたのだろうなぁと、やはり他人事ならぬ思いで考える。

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2008/10/26

それだけ

家族がそろって出かけていくのを横目に、家にこもって仕事をする。

あとから取材したほうの原稿を先に仕上げて寝る。

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2008/10/25

社会科見学

Tomare 朝からパソコンにむかって、ぽつぽつ仕事をする。

気分転換に読んだ新聞の折込チラシに、近所にある中古マンションの販売広告が載っていたので、散歩がてら恋人と内見に行く。駅前のタワーマンション、それも築浅とあって、相場よりだいぶ高い物件である。どんなすてきな部屋なんだろうと期待して行ったのに、中途半端な間取りだし、特別な工夫が凝らされているわけでもないし、安普請だし、ひとつもいいところがなかった。

唯一特筆すべき点があるとするならば、その眺望が挙げられるけれど、それだってじき隣にもう1棟同じようなタワーマンションが建つので、寿命は長くない。がっかりして、早々に部屋をあとにした。

もちろん、今の私たちにマンションを買うだけの財力なんてないのだけれど、こうやってよくあちこちの物件をのぞき歩いているおかげで、少しずつ見る目が養われてきたように思う。そうして来るべき日を待つ所存である。あるいは、そんな日は永久に来ないやもしれないけれど。

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2008/10/24

ばしゃばしゃ道

亀戸にて取材。現地へむかうときには、バケツを引っくり返したようなひどい雨だったのに、取材を終えて出てくると、もう止んでいる。畳んだ傘をぶらさげて押上まで歩き、地下鉄で帰る。

午後、ふたたび豪雨。恋人とふたり、川のようになった道をばしゃばしゃと歩いて、路地裏のカフェへ行く。あんまりにもすごい雨で、思わず声を出して笑ってしまう。ようやっとカフェにたどり着いたときには、ふたりとも濡れねずみになっていた。

雨音をBGMにシナモントーストをかじりながら、卒業論文を執筆中の大学生に、インタビューを受ける。テーマは古本市について。書店への就職が決まっている彼は、私なんかよりよほどしっかりしていて、ずいぶん頼もしい若者がいるものだとびっくりする。ふにゃふにゃの自分を恥ずかしく思いながらも、たっぷり2時間しゃべって外へ出てみると、またも雨は止んでいた。

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2008/10/23

大きな宿題

雨の池袋にて取材。ディレクターのHくんが、「今までで一番難しい」と頭を抱えてしまうような案件に当たり、私も一緒になって頭を抱える。とはいえ、一度受けてしまった仕事を投げ出すわけにもいかないので、改めてコンセプトを打ち合わせることにして別れる。

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2008/10/22

正しく、よりも、楽しく

東京下町の古本屋が舞台、という設定に惹かれて『東京バンドワゴン 』を読む。小説としてではなく、ホームドラマの台本として読めばおもしろいだろうと思う。けれどホームドラマの大家、向田邦子と比べるには、まだまだ時期尚早である。

夜、馴染みの古書店で、ふちがみとふなとトーク&ライブを聴く。まったくなんの予習もしないままに飛びこんだ「ふちふな」の世界は、とても楽しくて、私は終始ほおをゆるめっぱなしだった。正しく演ろう、というよりも、楽しく演ろう、という気持ちのほうが伝わってきて、知らぬ間にこちらまでにこにこしてしまうのである。

ボーカルの渕上さんは、吐く息まで楽器にしてしまう。喜劇役者が好きだという言葉どおり、からだじゅうを使ってじたばたと歌いあげるその歌には、ひとを微笑ます魔力のようなものがそこはかとなく漂っていて、けれど同時にどこかさみしさも感じさせる。なんとも不思議な歌なのである。

「バブの店さき」「ひっこし」「さらばジャマイカ」という歌が気に入り、さんざん悩んだ末、その名も『バブの店さき』というアルバムを購入し、おふたりのサインをいただいて帰る。

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2008/10/21

爆弾

寒くなったからか、古傷が痛む。それで、腰に爆弾を抱えていたことを思い出した。年に数回、そういうことがある。年を重ねるにつれて、その頻度があがってゆくのかもしれない。

からだを温めるために、夕食は鍋にする。ポン酢に大根おろしを入れて、肉も野菜もたっぷり食べた。

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2008/10/20

魔力

訳あって今新聞を2紙購読しているのだけれど、そのうちの1紙がたまりにたまって部屋の片隅で山となっているので、10日分ばかり一気に読む。少し山も低くなる。それから、梅雨のころに読みはじめた『楡家の人々』を、ようやく読破する。『大地』ほどではないにしても、長かった。

夕刻、犬用の歯磨き粉とビスケットを買いに行くと、我が家の愛犬と同じミニチュア・シュナウザの子犬が売りに出されていた。飛び跳ねて遊んでもらおうとする仕草が、なんとも愛らしい。うちの子も生まれたばかりのころはこうだったのよね、と懐かしい思いでしばし眺める。どうかしてしまいそうなほど、かわいい。そのまま見つづけていたら、勢いあまってつれ帰ってしまいそうになったので、あわててケージを離れた。

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2008/10/19

まさに偶然

昼よりD坂シネマ。無声の白黒映画『Beautiful Japan』と『A Trip Through China』を2本つづけて観る。どちらも120分を超える長いフィルムで、解説がなければ早々に寝入っていたかもしれない。けれど大正時代の日本を垣間見る(それも外国人の視点で)のは、なかなかおもしろく、得がたい経験をさせてもらった。

それから古本市でお世話になった方へご挨拶に行くと、過去に一度仕事を任せてもらったことのあるディレクターさんに、ばったり遭遇。まさかこんな場所で会うとは思いもよらず、一瞬ふたりそろって、ぽかんと呆けた顔で見つめあってしまった。悪いことはできないものである。

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2008/10/18

あのひとがこのひと

重い腰をあげて、古本市で使った備品を整理し、売上の集計をする。これが予想以上に大変で、結局、部屋が薄闇に満たされるまでかかってしまう。

『夜になるまえに』を観る。主演はハビエル・バルデム。私と恋人が初めてふたりきりで観た映画『海を飛ぶ夢』でも、主演を務めていたひとである。

映像も美しいし、カットも凝っているのだけれど、どうしてか深くは入りこめず、最後まで焦点を結ばないままにおわってしまう。でもバルデムの演技はすばらしかった。あの映画と同一人物とは到底思えない。次は『ノーカントリー』を観よう。

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2008/10/17

打ち上がりきる

Gioiamia たっぷり寝て、朝日もまぶしい朝風呂に入る。露天風呂は私だけの貸切状態で、ゆうゆうと手足を伸ばして入る。

チェックアウト後、アジアン・オールド・バザールなるところへ行ってみる。ここにはバリ、ベトナム、ネパールの3つの小さな市場があり、それぞれの国の料理が食べられるレストランも併設されているのである。

ちょっとしたテーマパークのようなそこへ足を踏み入れて、「あぁ、バリだ」と懐かしい思いに駆られる。そこに広がっていたのは、まさに今年の3月、ふたりで観てきたバリの寺院であり、舞踊の舞台であった。市場につけられた名前も、クタやレギャンやスミニャックではなく、私たちが訪れた「ウブド」。だから余計に親近感が湧くのかもしれなかった。

それから、すぐ近くのジョイア・ミーアというイタリアンレストランへ行く。ここはずいぶん前に、かしまし娘Fちゃんが教えてくれたお店である。はからずも開店時刻の11時きっかりに到着すると、すぐに席に案内してくれたけれど、私たちが店を出るころにはすでに満席で、順番を待つひとが店の外にまであふれていたから、よほど人気があるらしい。

私たちはそろって数量限定のランチプレートをいただいたけれど、たしかに味も量も申し分なかった。また那須へ来るようなことがあれば、今度は併設されているベーカリーのパンを買おうと心に決める。

よく寝、よく食べ、よく歩き、からだにたまっていた悪い気をすっきり出し切ったような、とても清々しい気分で家路につく。

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2008/10/16

秋色の山にひそむ危険

5時半、那須岳を目指して出発。予報どおりの快晴。

Img_54292 ところが、もう少しで佐野というところまで来て、「キリ発生 80km規制」という電光掲示板に出くわした。こんなにいいお天気なのに、まさか、と半信半疑で進んでいくと、ふわっと雲に吸いこまれるようにして、霧に包まれたのである。霞のなかにぼうと立つ木々の姿は、まるで映画に登場する深閑としたヨーロッパの森のようである。やがて霧は晴れ、青空が戻ったけれど、なんとも不思議な体験だった。

8時半、那須ロープウェイ駅に到着。いざ登らん、と気持ちを奮い立たせたのも束の間、駐車を待つ長い列に巻きこまれる。いつになったら順番がまわってくるのか、見当もつかいないので、仕方なく回れ右をして少し坂を下った空き地に車を停め、そこから駅まで歩くことにした。

ところどころ紅く色づきはじめた那須岳は、中高年ハイカーたちに人気があるらしく、ロープウェイ乗り場には、私たちと同じようにリュックを背負ったひとたちがたくさんいる。さらには遠足とおぼしきちびっこまで同じゴンドラに乗り合わせて、にぎやかなことこの上ない。

ロープウェイはほんの数分で、私たちを那須岳のひとつ、茶臼の9合目まで運んでしまう。茶臼はいまだにあちこちから噴煙をあげる活火山である。それゆえ、さほど高い山ではない(約1900m)のに、頂上付近にはまったく木々が生えておらず、ロープウェイを降りたとたんに展望がひらける。同乗したちびっこたちは、さっそく展望台に散らばって歓声(ときに奇声)をあげていた。

Img_54492 そんな彼らに追いつかれまいと、私たちはさっそく頂上を目指して歩きはじめる。展望がよいのはいいのだけれど、ざらざらした火山礫からなる道は、すっきりとした見た目に反して歩きづらい。現に、足をすべらせて転ぶひとも見かけた。慎重に歩を進める。

頂上に近づくにつれて、火山礫はどんどん大きくなり、やがてごろごろした岩の転がるガレ場になった。そうして、登りはじめてから約40分、茶臼岳の頂上に到着。雄大な景色がひろがる。

Chausupeak_2  Chausupeak2

まだ昼までは間があったのだけれど、おなかの空いた私たちは、風の弱い場所を選んで早めのランチをいただいた。しばしの休憩ののち、今度は朝日岳を目指してふたたび歩きはじめる。

さすがは活火山。岩の隙間からもくもくと煙が立ちのぼる。ときどき思い出したように、ぼぉーというジェット機のような音が聞こえてきたけれど、ひょっとするとあれも噴気の音だったのかもしれない。

噴煙をとらえた写真のむこう側、赤茶けた岩肌をさらすのが、目指す朝日岳である。よくよく見れば、岩肌にくねくねと伸びる道がつけられ、ひとが点になって歩いている様子がわかる。私たちもこれからその道を行くのだ。

Chausupeak3_2

Minenochaya 噴火口とおぼしき、すり鉢型の凹みをなぞるようにして茶臼岳を下ると、えんじ色の屋根を持つ小屋が見えてくる。それが峰ノ茶屋。茶屋と言っても非難小屋である。このあたりは風の通り道になっているらしく、強烈な突風に飛ばされて遭難した登山者もいるという。幸い、今日は風も穏やかで、たくさんの登山者が小屋のまわりに腰を下ろして休憩をとっていた。

Kiken さらに先へ進むと、「危険」と書かれた看板が設置されている。ここから朝日岳に至る登山道は危険だと注意を促す看板なのであった。そんなこと一言も言っていなかったじゃないか!と恋人をにらんでみたけれど、恋人は「へいきへいき」と、素知らぬ顔で先へ進む。はてさて、いったいどんな危険が待ち受けているのやら。

山腹につけられた道は、たしかに狭く、ほかの登山者とすれ違うにはどちらかが道を譲らなければならなかったけれど、秋色に染まった草花が風に揺れる平和な道であった。しかしさらにぽくぽく歩いていくと、私にとっては初めてのクサリ場に出くわしたのである。

クサリ場とは、まさにクサリの打ちつけられた岩場。中高年ハイカーがこれだけ訪れる山なので、さほど険しい道ではないけれど、それでもうっかり足をすべらせようものなら、間違いなく骨折以上のケガをするだろうことは容易に想像できた。

Kusaribaただでさえ運動神経の鈍い私は、自分でも笑ってしまうくらい真剣に、それこそ山肌にかじりつくようにしてクサリ場を歩いた。やっとの思いで長いクサリ場を抜けても、山頂にかけてさらに険しい道がつづく。足がすくんでしまいそうだったので、なるたけ後ろを振り返らないようにして、もくもくと歩く。ふと顔をあげれば、ついさっきまでいた茶臼の頂上が、もううんと遠くに見える。

12時20分、朝日岳の頂上到着。リュックをおろしてひと休みする。昼を過ぎて雲が出てきたものの、四方の山がよく見渡せる。

しばらく休んで、下山を開始する。同じようにクサリ場を通って帰るのだけれど、なんとか無事に危険をくぐり抜けた安堵からか、なんでもない道で石ころにけつまずいて、派手に転んでしまった。先ほど「平和」と書いた、あの道である。

クサリ場付近でなくてよかったと、ほっと胸をなでおろしたものの、転んだ拍子に石にしたたかにぶつけた左手が、じんじん痛い。手袋をはずしてみれば、もう赤黒く腫れている。「危険」はこんなところに潜んでいた。

とんだハプニングに見舞われたものの、14時、無事に下山。朝ロープウェイに乗った駅まで戻ってくる。駐車場は相変わらず満車で、大型バスも何台も乗りつけていた。乳酸のたまった足を引きずって車へ戻り、車内で着替えて、今宵の宿へむかう。なにしろふたりきりの打ち上げなので、ちょっと奮発して贅沢なホテルをとったのである。

Akiiro 案内された部屋は、予想どおり、幾たびもため息をこぼしてしまうほどすてきな部屋であった。けれど登山で疲れた私たちは、大浴場で汗を流すと、部屋のすばらしさを堪能する間もなく、眠りに落ちてしまった。そうして、予約を入れておいたレストランからの電話に夢を破られるまで、たっぷり2時間も夕寝をむさぼったのだった。

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2008/10/15

その行方

恋人が仕事に行く前の時間に、再開発でどんどん姿を変えてゆく我が家の近所を歩く。私の慣れ親しんだ町並みは、もうほとんど残っておらず、はるか遠くまで見晴るかせる広大な更地になってしまった。

丸裸にされ、寒々しく大地をさらす町にカメラをむけながら、そこに息づいていたはずの生活に思いを馳せる。みんなどこへ行ってしまったのだろう。これから町はどうなってしまうのだろう。主をなくした門だけがぽつりと取り残された一角を、小学生が元気に傘を振り回しながら通り過ぎていった。

夕刻、仕事帰りの恋人と待ち合わせて、山の地図を買う。今回は那須岳へ登ることになったらしい。恋人はほくほくした顔で、買ったばかりの地図を眺めている。ついでに那須へ1泊して、ふたりきりで古本市の打ち上げをすることに決め、遠足前夜の高揚感に包まれながら荷作りをする。

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2008/10/14

先手

木曜の天気予報が晴れマークひとつだったので、恋人のお株を奪って、私から山に誘ってみる。もちろん恋人はすぐに乗ってきて、目を輝かせながら登山本を繰りだした。

午後、いつも仕事でお世話になっているHくんの会社へ、新規事業の説明を受けに行く。あいさつに出てくるディレクターさんたちの全員がすでに顔見知りで、あぁもうこの仕事をはじめてそれなりに時間が経ったのだなぁと感慨深く思うと同時に、そのくせいつまで経っても取材に慣れない自分が少し恥ずかしくなる。

ところでHくんは、私の知らぬ間に昇進していたらしく、新しい肩書きで呼んでみると、くすぐったがって身をよじるので、おもしろくなって何度も何度も呼んでやった。これでもうしばらくは、私の仕事も安泰だろう。

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2008/10/13

聞こえた音は

車で古本市の会場のひとつだったお寺へ行き、最後の掃除をして、荷物を引きあげる。帰り際、住職の奥さまと話をした。「古本市をやると、どんなことが学べるんですか」と笑顔で尋ねられ、それはまさにここ数ヶ月の間、恋人とふたりでずっと考えつづけてきたことであったので、思いがあふれてつい饒舌になってしまう。

とにもかくにも、これで一通りのことに片がついた。どさり、と肩の荷の下りる音が聞こえたような気がする。

それから、かしまし娘Yちゃんのお宅へお邪魔する。昼から来ているS、Fのふたりは、もうすっかりくつろいだ様子で出迎えてくれた。特に、夫に子どもを預けて出てきたSちゃんは、家のことを気にかけながらもはしゃいでいるように見える。

みんなの持ち寄ったお土産を食べながら、他愛もない話をし、旅の計画をたて、駅前のダイニングバーに場所を移してさらに飲み食いし、Fちゃんの終電間際になってようやく帰路についた。かれこれ15年もともに過ごしていながら、初めて知る事実があって、ひどく驚かされたけれど、楽しい夜であった。

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2008/10/12

おてんとさまの恵み

Lion_3

祈りが通じたのか、古本市当日の朝はよく晴れた。

Morning_2  

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Morning2  

約2時間半かけて各会場(3ヶ所)の設営をし、いよいよスタート。たくさんのお客さんが来て、本や雑貨を買い、お茶を飲み、展示をのぞき、紙芝居に見入り、パフォーマンスに驚き、おしゃべりに花を咲かせ、思い思いの時間を過ごしていった。

People  

People2  

迫力の紙芝居を演じてくださったのは、街頭紙芝居師の「じゃんぼ」こと、おかもとりよさん。

Kamishibai1

Kamishibai2 

会場のひとつには、一日限りの『物怪図書館』も登場。夏旅で運命的な出会いをした、倉敷出身の方が手がけてくださった。

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Mononoke_toshokan2

ヤギのメリーさんも登場。ヨーデルにのって、次々と不思議な人形を作り出しては、お寺の軒先に吊るしてゆく。

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Mrsmarys_strange_fruit3

カフェや雑貨屋も、一日だけの出張店舗をオープン。

Cafe_hinataya

Mameko

Tsurugidou

Tokyobike

古本のディスプレイも、回を重ねるたびにかわいく、実用的に。

Books1

Books2

Books3

Books4

笑顔に彩られた、よき一日。

Huruhonichi

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2008/10/11

あとひとつ寝ると

古本市前日。雨がやむのを待って、車で荷物の搬入をする。一度帰って、今度はSRで出かける。細々したものを買い足して、ふたたび会場まで運ぶ。

帰ってから、駄菓子屋の袋を印刷したり、看板を作ったり、各会場に持っていく荷物の仕分けをしたり、会場の設営見取り図を描いたりと、最後の作業に励む。机の上に貼りつけておいた「やるべきこと付箋」が、1枚1枚減っていく。

いよいよ明日。

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2008/10/10

大人の特権

Dagashi 古本市で街頭紙芝居をやっていただくのにあわせて、駄菓子を売ることにしたので、兄嫁Nさんと甥っ子につきあってもらって、日暮里の駄菓子問屋へ買出しに行く。

数年前までは、駅前の路地を入ったところに、古い家屋が軒を連ねる駄菓子屋横丁があり、ちょっとした観光名所になっていた。それが大規模な再開発にともなって姿を消し、ほとんどの駄菓子屋が店を畳んでしまったのである。今は、ぴかぴかだけれどすかすかのビルに、わずかに2軒が残るだけとなっていた。

その2軒をはしごして、どっさり駄菓子を買いこむ。子どものころから考えると、まるで夢のようである。なにしろ、蒲焼さん太郎も酢だこさん太郎もうまい棒も人参もミックス餅もサイダーヨーグルも、なにもかも箱買いできるのである。甥っ子が寝ついたのをいいことに、ふたりできゃあきゃあ言いながら、楽しく買物をして帰る。

それからがまた楽しい。山と積まれた駄菓子のなかから、思い思いのものを選んで袋詰めし、福袋を作ったのである。福袋というからには、値段以上のものを入れる必要があるわけで、儲け度外視・楽しさ重視で、100円の福袋に110~130円分の駄菓子を詰めこんだ。

Dagashiya すぐに売り切れちゃったらどうしよう、追加する?などと取らぬ狸の皮算用をしながら、大人になった喜びを噛みしめたのであった。

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2008/10/09

そわそわ

今日も一日、古本市の準備。午前中はいつものシモジマへ行って、不足しているあれこれを買いこみ、午後は会場のお寺で作業をし、さらに実行委員会メンバーの古書店へ寄って、当日使う荷物の仕分けをし、やっと一息。まだまだ考えるべきことがたくさん残っていて、落ち着かない。

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2008/10/08

牛歩

数日後に迫った古本市の準備を、じりじりと進める。やってもやっても終わりが見えない。ひとつ用事を済ませるついでに、夜の散歩をする。外はもうすっかり秋の気配。

それから阪神対巨人戦を観、録画しておいた木下恵介のドキュメンタリーを観、布団に入る。恥ずかしながら、木下恵介があんなにも社会派だったとは知らなかった。

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2008/10/07

ときに邪魔者

ひとりで街へ行き、どんどん服を買った。恋人が一緒にいたら、きっと「いらない」と言って棚に戻されるだろうなという服も、ひとりなので平気で買う。年に数回、そういう衝動に駆られるときがめぐってくるのである。

大きな紙袋をふたつぶら提げて、仕事帰りの恋人と合流し、ボリューム満点の夕ごはんを食べて帰る。うちに着いてから、今日買った服を見せると、案の定「いらないよ」と言われる。けれど私はご満悦。あぁ、ひとりで行ってよかったと、にまにまする。

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2008/10/06

アンモナイト

清々しい気持ちで目を閉じたはずなのに、どうしてだか眠りが浅く、明け方に目覚めてしまう。仕方なく読みさしの本を開き、睡魔に導かれるのを待ってから、ふたたび目を閉じる。

午後、Hくんより追加原稿を依頼されて、ひと仕事。ちょうどそれを仕上げたころ、兄のアトリエに知人数人が遊びに来たので、もらいものの大福とお茶を出して、しばらく話をする。谷中という町を介して、私の知人と兄がつながったのが、おもしろい。

恋人と進まない自転車をこぎに行った帰り、男友達より電話がかかってくる。最近なにしてるの、と訊かれたので、古本市の準備に追われてる、と答えると、化石みたいなことしてんねと返された。褒め言葉であろうか。

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2008/10/05

神さま仏さま助っ人さま

恋人が、これからの人生を左右するとても重要な仕事に出かけるのを見送って、私も仕事に精を出す。がんばって夕方には仕上げ、その勢いで古本市関連の仕事までどんどん片づけてしまう。

恋人の帰りを待って、千駄木で古本市の助っ人集会。たくさんの人たちが集まってくれて、それだけでもうとても励まされる。昨日、どこにも味方なんていないのかもしれない、と世を儚んでひどく落ちこんだのが嘘のように、一気に心が軽くなった。これでどうにか当日を乗り切れそうである。助っ人さんたちには、いったいどうお礼をしたものやらわからない。

外に出ると、雨が降っている。みんなで肩を寄せ合うようにして、近所の居酒屋へ移動し、楽しく飲んだくれる。帰るころになっても、まだ雨は降りつづいていて、傘を差しながら延々自転車を押して帰る羽目になったけれど、それでも清々しい気持ちのまま眠りについた。

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2008/10/04

乱高下する気持ち

朝から仕事。思ったより捗がいって、焦る気持ちがやっと落ち着く。いつもながら、もっと早く手をつければよかったという思いは変わらないけれど。

午後は古本市でお世話になるお寺へ行って、あれこれ作業をする。さらにもう1軒まわって、打ち合わせをしてから帰る。

背中とおなかがくっつきそうなほど空腹で、近所のインドカレー屋へ行って、思うさま食べる。午前中とは一転、なんだかとても落ちこんでいたのだけれど、恋人も同じであることがわかり、少しだけ気持ちが上向いた。帰ってもりもり仕事をする。

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2008/10/03

午後4時のお茶会

Cake 今日も朝から古本市の準備。午前中は家で作業をし、午後は自転車で町をめぐる。

予定していた仕事に片をつけたあと、路地にひっそりたたずむお気に入りのカフェへ行く。そこでケーキセットをいただいて、ようやく人心地ついた。午後4時のお茶会。

注文を受けるたびにドリップしてくれるコーヒーもおいしいのだけれど、ほんのり温かい手作りケーキが、私は好きなのである。ケーキに添えられた、ふわっとやさしい生クリームがとてもおいしくて、お皿についたものまできれいにすくって食べてしまう。ほんとうは生クリームは苦手なのに。

ぎすぎすとんがっていた心まで、ふわっと包んでもらって、家に帰る。そして今度は、パソコンにむかって仕事をする。

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2008/10/02

見下ろす街は

Tokyo 古本市の準備に追われ、恋人のSRで街を駆けまわる。途中に立ち寄った文京シビックセンターで、1年半ぶりに展望台へのぼる。あまり知られていないことなのだけれど、実はここ、無料で東京の街を一望できる穴場なのである。

上から見下ろす東京の街は、とても広い。そして、とても窮屈そうである。けれどそこに、人々の生活がしたたかに息づいてることを、私たちは知っている。その意味で東京は、少しも生活の匂いが感じられないドバイとは、まるで性質の違う都市である。

それにしても、チラシの詰まったリュックは、やっぱり重い。おかげで何度も引っくり返りそうになってしまった。そうしたらきっと、甲羅を返されたカメのようになるのだろうと想像して、バイクのうしろでにたにた笑う。

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2008/10/01

その手にあるもの

なにもやる気が起きず、読書に逃げる。それから、録画しておいたNHKの「沸騰都市 ドバイ」を観る。砂漠でものすごいマネーゲームが展開されている。それが砂上の楼閣であることを誰もが知りながら、なお建設ラッシュを止められないという事実の、なんと恐ろしいことか。マネーゲームに踊る人々は、とてもたくさんのものを持っているようで、その実、なにも持ってなんかいないのである。

見おわったあと、なにかが吹っ切れて、こつこつ古本市の準備に励む。

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