しっかりイヴ
寒いぞ寒いぞ、と天気予報が脅すので、うんと厚着をして夜の恵比寿へ行く。仕事帰りの恋人と落ちあって、つばめグリルでハンブルグステーキを食べ、ちょっと気取ってシャンパンなぞ飲んで、ほろ酔いでガーデンホールへ。今夜は、私の大好きなアン・サリーと、恋人の大好きな細野晴臣のライブなのである。
手にしたチケットは、なんと2列目。それも通路側で、視界をさえぎるものがなにもない。
うわー、近い近い、と騒いでいたら、見覚えのある後ろ姿が横切った。あの髪型、間違いない、古本ライターの岡崎さんだ。その隣にも見覚えのある顔がふたつ。偶然にも同じ列に知り合い3人組がいらしたのである。声をかけると、あちらもびっくり。こんなこともあるのだなぁ。
そしてはじまった聖夜のライブ。まずはアン・サリーが、それこそ天に昇ってゆくような、しっとり透きとおった歌声を聴かせてくれる。なんというか、それはとても「正しい」歌声で、ひとつひとつの音、言葉が、それぞれあるべき場所にそっと優しく置かれてゆくのを聴いているようであった。
けれど歌声のしとやかさとは少し違って、ご本人は意外にも自由闊達なひとであるらしく、何曲目かに履いていた靴を脱いでしまうと、最後はその靴を手にぶらさげて、おどけながら退場していった。
セットチェンジのための休憩をはさんで、今度は細野さんが登場。「今夜はホーリーな雰囲気で」と言っていたアン・サリーにかぶせて、例のハスキーボイスで「ここからはダーティー・ハリーでいきます」と会場を笑わせていた。
それにしても、さすがは重鎮。どっしりとしたものである。その安定感たるや、どうだろう。ここまでくるともう「正しさ」なんて重要ではなくて、「ハリー」でさえあればいいのである。器用にペダルスティールを操る高田漣くんも愛らしく、約1時間の細野パートはあっという間に過ぎていったのだった。
アンコールは、もちろんふたりそろって。私の好きな「三時の子守唄」と「White Christmas」をふたり一緒に歌い、楽しい夜は幕を閉じた。あまたのカップルが身を寄せ合うガーデンプレイスを抜けて、駅へ向かう。あぁ、しっかり“イヴ”をしてしまった。
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