家族のこと

2009/01/31

共同作業とやら

荒れ模様のなか、一駅先のドトールにて、仕事の打ち合わせ。
ところが、待てど暮らせど相手のイラストレーターさんが来ない。
まさか、と思って電話をかけてみると、一瞬の沈黙ののち、はっと息をのむ気配があって
「ごめん、忘れてた!すぐ行きます!」と、電話口のむこうで勢いよく空気が流れ出すのが伝わってきた。

1時間遅れで打ち合わせを終わらせてから、町のちいさなイタリアンレストランで恋人と落ち合う。こちらのお店を貸し切って、2月に両家の顔合わせ食事会を開くことになったのだ。
メニューを決めて、お店のひとに勧められるまま、ケーキカットまですることに決めてしまう。帰ってから、やっぱり恥ずかしいよね、と恋人と言い合うけれど、とても熱心に勧めてくれたことを思い出して、腹をくくった。

いよいよ、「そのとき」が近づいている。

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2009/01/04

四も富士

French_toast 今日もよく晴れ、4日連続で富士山を拝む。

兄嫁Nさんと甥っ子と、根津神社まで散歩に行く。さすがにもう初詣のひとも少なく、露店も数えるばかりになっていた。お参りをして、近くのカフェでチョコバナナフレンチトーストを食べ、さらに散歩をつづける。甥っ子もベビーカーを降り、得意そうによちよち歩く。

おやつの時間を過ぎたころにふたりと別れ、古本カフェで知人のライターさんと仕事の打ち合わせ。1時間ほど話して帰宅する。

町田康『告白』を読みきってから、ひとりで夕ごはんを食べ、今度は山田風太郎『風眼抄』を読みながら半身浴をする。福島の恋人は、久々のスノボで体力を使い果たしたらしい。何通かメールをやりとりして、寝る。

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2008/12/28

あたらしい名前

恋人の姉ふたりが、上京したついでに、我が家へあいさつに来る。結婚が決まってから、ふたりに会うのははじめてのこと。「Ⅰ(恋人の名字)になります。よろしくお願いします」と深々頭を下げた途端に、ああそうだった、私はもうすぐ名前が変わるんだったと、今さらながらに気づく。

夜、『平成長屋』というドキュメンタリーを観る。夢を追う若者たちが暮らす、現代版長屋の話。画面に映るひとたちを素直に応援できないのは、自分のなかにも同じものを感じるからだろうか。なにか釈然としないものを抱えたまま、眠りにつく。

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2008/12/25

じつは家族の日

遅ればせながら、年賀状と来年の手帳を買う。帰りに、一駅手前で電車を降りて、大きなケーキも買う。そうして家族みんなでステーキを食べた。毎年恒例、ささやかなクリスマス会。クリスマスにかこつけて、家族が集まる会なのである。

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2008/12/21

それでも日々は

いつまでもぐずぐずしてはいられないので、朝から仕事。おやつの時間まで書きつづけてから、図書館へ行くという恋人と一緒に、モモをつれて散歩をする。あまり感情を表に出さないモモが、今日は妙にはしゃいでいて、こちらまでうれしくなる。恋人とかわりばんこにリードを引いて、少し遠まわりして帰った。

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2008/12/20

やっぱり、いない

早く仕事をしなくてはいけないと思いながら、ぐずぐずしてしまう。娘に先立たれて、ひとりぼっちでぽつんと丸くなって眠るモモの姿を見ると、またじわじわ涙がわいてきて、なにも手につかないのである。もう二度と会えない、触れられない、という事実が、いまだに信じられない。

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2008/12/18

旅立つ

Pechi 未明に、愛犬ペチが旅立つ。急性肺水腫だった。棺にリードのついた首輪を納め、花を手向けて、家族みんなで見送った。

ペチはこの家で生まれた。ミニチュアシュナウザとなにかのクォーターで、足の短さと耳の形状から、私たちはコーギーの血が入ってるのでないかと見当をつけていた。足が短いものだから、お座りもうまくできなくて、いつもお嬢様座りをしていた。そうして短い前足で一生懸命にお手をした。

ペチがまだ幼いころ、ベランダに出してあったゴムのサンダルが欠けていたので、歯が痒くてかじったのだろうと思ったら、どれだけ探しても破片が見つからない。不思議に思っていたら、それはペチの排泄物から見つかった。ペチはサンダルをかじったのではなく、食べていたのだった。

長じてからその癖は少し変わり、ペチはフローリングの床を食べるようになった。まさに文字どおり、歯を立ててガリガリと削り取っては食べるのだ。もちろん何度も叱ったけれど、その癖はとうとう治らなかった。だからペチのいた部屋の床は、見るも無惨にぼろぼろだ。

それから多くの犬と同じように、サイレンの音が聞こえてくると、ペチは上手に歌を歌った。甥っ子が持っているおもちゃの救急車のサイレンを鳴らしても、同じように歌うので、おもしろがって日に何度も歌わせた。上手だね、とほめると、ペチは得意になって短いしっぽを振った。

夜はいつも父と一緒に寝ていたけれど、父が寝入ったとみると、ペチは脱走した。甘えん坊のくせに、気の強いところもあって、見知らぬ人が来るとしつこく吠えたてた。反対に、甘えるときもしつこくて、もっとかわいがれとばかりに、短い前足でいつまでも催促しつづけるのだった。

ほんとうに、とてもかわいい犬だった。思うさま「犬かわいがり」した。だからひとつも後悔はない。「死」は、いつか必ず訪れるものであって、きっと悲しむべきことではない。

でも、やっぱりさみしい。できることなら、もう一度この腕にペチを抱いて、くしゃくしゃにかわいがりたい。そう思うと、また涙があふれてくる。泣いても泣いても、いくらでもあふれてくる。

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2008/12/04

喜びじわり

恋人の内定と私たちの結婚について、ついに母に告げる。母は、さみしいなぁ、と言いながらもとても喜んでくれて、しばらく疑心暗鬼に陥っていた私たちまでうれしくなる。父には、「しかるべきとき」を選んで報告することにする。

Christmas_tree 母の喜ぶ顔を見たせいか、急に気分が高揚し、恋人の眼鏡をつくるついでに街へ出かけていって、雑貨屋などのぞいてしまう。頭のなかは、すでに新居のことでいっぱいである。ひとの集まる、ゆったりくつろげる部屋にしたいと考えてすぐ、東京を離れることを思い出し、また少し胸がすんすんする。

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2008/11/21

幸せな重み

Gioiamia ホテルをチェックアウトしてから、先日恋人とふたりで訪れたジョイア・ミーアへお母さんとおばあちゃんをつれていく。オープンとほぼ同時に入店したときには、まだほんの数席しか埋まっていなかったのに、注文してから料理が運ばれてくるのを待つ間に満席になってしまうほどの人気ぶり。

ボリュームたっぷりの熱々パスタは、たしかにとてもおいしい。健啖家のおばあちゃんはもちろん、食の細いお母さんだって、ソースのひとすくいも残さず、すっかりきれいに片づけてしまった。

近いうちにまた会う約束を交わして、お店の前でお母さんたちと別れる。それから乗りこんだ私の愛車は、お米やらりんごやらお菓子やら、お母さんからいただいたお土産でいっぱいで、行きよりいくぶん重くなったようにも思える。ひょっとするとそれは、子(とその嫁候補)を想う気持ちの重さだったのかもしれない。

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2008/11/20

意外な過去

Akiiro2 朝風呂のち朝マッサージ椅子。ちゃんと“おはようモード”なるものが備わっているから、驚きである。

昼食にはおそば、と決めていたので、あらかじめ調べておいた店へむかう途中、またはらはら雪が舞った。お天気雨ならぬ、お天気雪である。けれどすぐに止んでしまって、昨夜の雪同様、積もるにはいたらない。

それからホテルに戻って、誰もいないプールで泳いでみる。室内の温水プールとはいえ、寒い。すぐにあがってジャクジーに飛びこむ。先日登った那須岳のてっぺんが望める。あのときはまだ紅葉していたのに、茶臼はもう雪をかむって真っ白になっていた。

そして今夜も、ビール片手に団欒。おばあちゃんはとうとう睡魔に勝てず、一足先に寝てしまったので、恋人とお母さんと3人で語らう。恋人が高校時代は遅刻の常習犯だったことや、学校をさぼって友達と釣りに出かけ、あっさり見つかってしまった話などを聞く。やんちゃである。

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2008/11/19

脱ぎっぷり

Akiiro 今年2度目となる、恋人の家族との温泉旅行のため、一路那須へ。車の窓から、雪をかむった富士山がくっきり見える。

ホテルの駐車場に着くと、あちらのお母さん、おばあちゃんもちょうど到着したところだったので、一緒にチェックイン。部屋でお母さんがむいてくれたりんごをいただき、お茶を飲みながら近況報告をすると、さっそく大浴場へ行く。はだかのつきあいも3年目になると、もう堂々としたもので、ぱっぱっと脱いで平然と一緒のお湯につかる。

夕食は、ホテルの近くの定食屋でいただくことにした。外へ出てみれば、夜空にちらちら白いものが舞っている。雪だ。コートの襟をかきあわせ、寒い寒いと言い合いながら、あわてて車に乗りこんだ。

そしてまた温泉へ。つま先までぽかぽかになって、お母さんたちの部屋でビールを飲みながら、日付が変わるまで話しこむ。早寝早起きが習慣のおばあちゃんは、まぶたが今にもくっつきそうだったけれど、孫と過ごす時間がよほどうれしいのだろう、私たちが引き揚げるまでがんばってしゃんとしていた。

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2008/11/18

寝る子は育つ

Zzz 午後、先日お宅訪問をしたKさん親子が、今度は我が家に遊びに来る。ちびっこが泣いて喜ぶおもちゃをたっぷりそろえた兄嫁Nさんの部屋で、ふたたび甥っ子とクォーク君があいまみえる。

やはり泰然としたクォーク君に対して、甥っ子はもう「所有」という観念を覚えたらしく、なかなかおもちゃを渡そうとしない。それでも、遊び相手だということはわかるらしく、なんやかやとちょっかいを出す。

授乳タイムとオムツ交換タイムを挟んで、いざ第2ラウンド突入!と思いきや、甥っ子はオムツを換えてもらったそのままの姿勢で、ぐうぐう天下泰平の寝息をたてはじめた。前回に続いて、2度目の失態である。あるいはよほど楽しくて、体力を使い果たしてしまったのかもしれない。

Kさんの新居での再会を約束し、夕方別れる。次に会うときまでに、ふたりがどれだけ成長しているか、楽しみである。

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2008/11/17

ディスコミュニケーション

2008_02090056 愛犬ペチを病院へつれていく。久々の散歩にはしゃぐので、心臓にさわりやしないかと、ドキドキはらはら。診察の結果、特に病が進行した様子もなく、1ヵ月分の薬をもらって帰る。

その道でもまた、よその犬を見かけては吠えたて、猫を発見しては追いかけようとし、こちらは気が気ではない。言葉の通じないもどかしさを嫌というほど感じたのだった。

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2008/11/11

柔軟なおとこ

Quark 急遽、友人Kさん宅へ遊びに行くことになる。Kさん宅には生後半年になるちびっこ(通称クォークくん)がいるので、兄嫁Nさんと甥っ子も誘って、バスに乗っていく。

Kさんとは3年前、古本市の手伝いをしているときに出会った。家がそう遠くないことは知っていたのだけれど、なかなか訪問する機会に恵まれないまま今日に至った。ところが、もうじき実家の近くへ越してしまうというので、その前にと、あわてて訪問を決めたのである。

Kさん宅に到着すると、甥っ子はさっそくおもちゃを物色しはじめる。挙句の果てに、クォークくんが握りしめているものまで奪おうとする。ちょっと自分のほうが大きいからといって、ずいぶん強気である。

当のクォークくんはといえば、泣くでもなく、泰然とことの成り行きを見つめている。たいそう寛容である。おまけにこてんとひっくり返ったかと思うと、写真のようにアクロバティックなポーズまで披露する大盤振る舞い。それでさらに気を大きくした甥っ子は、さんざん遊びまわり、しまいには遊び疲れて寝てしまった。こちらもたいそう自由である。

次回は我が家で遊ぶ約束をし、ふたたびバスに揺られて帰る。

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2008/11/08

かしぐ

小雨の降るなか、母とふたりで父方の祖母が暮らす特養老人ホームを訪れる。家族懇親会に参加するのである。

右にかしいだ姿勢でじっとしている祖母を挟むように座り、園長自ら腕をふるった焼きそばや、ホームの方々が漬けた梅干、豚汁などをいただく。祖母は目をつむったまま、まったく同じメニューを流動食にしたものを、母のスプーンから食べる。焼きそばや豚汁はもちろん、果物まで一種類ずつ小さなカップに分けてくれるので、祖母のトレイは色鮮やかだ。

夜、ウディ・アレンの『インテリア』を観る。監督本人も登場しないし、ユーモアもほとんど排した異色の映画。緊張に満たされた空気のなかで、ぎりぎりまで張りつめられた糸がとうとう切れてしまうまでを、色を抑えた静かな映像で綴る。なんとも息のつまる映画であった。

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2008/11/06

黄金色の穂

Sengokuhara_2 目覚ましに朝風呂につかってから、朝食をいただく。母たちは洋食膳、私と恋人は和食膳。ゆったり食後のコーヒーまで楽しんでから、車で仙石原のススキを観に行った。

平日にも関わらず、たくさんの観光客が訪れていたけれど、そのひとたちを呑みこんで、なおゆとりある広大なススキの原である。私たちも点のひとつになって、たっぷり黄金色をしたススキのなかを歩く。ススキはみな同じ方向にこうべを垂れて、さやさやと風に穂を揺らしていた。

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2008/11/05

家族の空中散歩

母、祖母、叔母、恋人と連れだって、箱根旅行へ出かける。まずは、仕事の都合上、1日早く旅立っていた兄家族と桃源台で落ち合い、芦ノ湖を望むレストランで食事をする。旅先で慣れ親しんだひとたちに会えたことがうれしいのか、甥っ子もはしゃいでいた。

兄たちと別れ、桃源台から大涌谷までロープウェイに乗ってみる。とても大きく、安定感のあるゴンドラである。晴れていれば見えるはずの富士山が、雲に隠れてしまっていたのは残念だったけれど、往復でたっぷり30分も空中散歩を楽しむことができたので、よしとする。

4時頃、ホテルへ。私と恋人の部屋はスタンダードの洋室、母たちのものは、金時山を望む露天風呂のついた和洋室である。どれどれ、どうなってるの、と露天をのぞかせてもらったところ、誤ってお湯張りボタンを押してしまった。それで、まだ風呂に入るつもりはなかったのだけれど、母たちに先んじて一番風呂につからせてもらう。まさに極楽。

Img_5655 ホテルの近くで鯛づけとろろ丼をいただいたあと、そろって日本シリーズを観戦する。ワンサイドゲームでおもしろくないものの、義務のようにしまいまで見届ける。平生、ひとりで部屋にこもっていることの多い祖母が、終始うれしそうに微笑んでいたのが印象的な夜であった。

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2008/11/04

動物写真と動物病院

Img_5585美術作家である兄の、グループ展用DM写真の撮影を手伝う。朝日が差しこんでいるうちにと、兄も私もカメラを手に持ち、それぞれ何十枚かずつ撮ってみる。最終的に私の撮った1枚が選ばれて、先方に送られた。

それから、我が家の愛犬ペチを病院へ連れていく。ペチは心臓に爆弾を抱えていて、「もし咳をするようになったら、次の段階に進んだということです」と獣医から申し渡されていたのだけれど、とうとうその咳がはじまってしまったのだ。

検査をしてみると、やはり以前より心臓が肥大していて、それが気管を圧迫するので咳が出るとのこと。獣医と話し合い、投薬療法を試してみることにする。これからしばらく散歩もお預けである。

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2008/11/02

つんつるてん

Nさん親子につきあって、上野へ。1歳と2ヶ月になる甥っ子のために、たっぷりした温かそうなコートを選ぶ。今はまだ少し袖の余るそのコートも、きっと次の冬にはぴったりになって、そのまた次の冬にはもう着られなくなってしまうのだろう。

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2008/09/30

昼の男

新宿にて取材。不注意で、ICレコーダーの電池が途中で切れてしまう。めったに録音したものを聴き返さないとはいえ、こんなことではいけないと反省しながら、熱心にメモをとる。

偶然にも、取材先が父の会社の目の前だったので、おわってから父を呼び出して、お茶を飲む。つい数時間前に顔をあわせたばかりなのに、父はもうしっかり昼の男の顔をしていた。

寝る前に『サウスバウンド』を観る。奥田英朗の同名小説が原作である。残念だったのは、原作の歯切れの良さが失われていたことと、視点が一定していなかったこと。それでもトヨエツ演じるお父さん(元過激派)が、びしっと要所を締め、ともすればつまずいてしまいそうな物語を引っ張る。西表島の巡査を演じる松山ケンイチも、ほのぼのした風味で、人情を感じさせるのに一役買っていた。

最近、原作を読んでから映画を観ることが多いのだけれど、どうもそれでは純粋に映画を楽しめないような気がする。はなから別物だと思って観ればよいのかもしれないけれど、どうしても原作の印象を引きずってしまうのである。今後は順序を替えて、映画を観てから原作を読もうと心に決める。

今日で9月もおわり。あっという間。

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2008/09/25

マザープロデュース

母と一緒に美容室へ行く。子どものころにはそういうこともあったけれど、長じてからは初めてである。

じきにマフラーの恋しい季節がくるので、ひとつに結べる長さを維持するか、あるいはいっそマフラーにかからないくらいにまで短くしてしまうか、美容師さんと相談しあっていると、「切っちゃってもいいんじゃない」と、鶴ならぬ、母の一声。それで、というわけでもないのだけれど、結局あごのラインまで切ることにする。

いざ切りはじめてみても、「もっと短くてもいいんじゃない」と横から声がかかる。「すぐ伸びるんだから」と。そして仕上がった髪型を見て、「うんうん、いいよ」。

かくして、私のぱっつんおかっぱボブは完成したのだった。昨日買ったばかりのヘアゴムは、これでしばらく日の目を見られない。

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2008/09/09

あさひ、やま、もち

Img_4415_2 午前4時起床。まだ日は昇っていない。車で首都高を抜けるころ、ようやく東の空が白みはじめる。いざ明けてくると、昨日の気象予報士の言葉が正しかったことがわかった。まさに快晴。朝ぼらけのなかに、これまでにないほどくっきりと山の稜線が浮かびあがり、なんとも美しい。

勝沼で高速を下り、うねうね山道を走ること約1時間。さすがに胸が悪くなりはじめたところで、ようやく登山口に到着する。時刻は8時。すでに駐車場には何台か車が並んでいて、金峰山の人気の高さがうかがえる。

服を着替え、準備体操をして、いよいよ山に分け入る。登ったかと思うと下りになり、そうかと思うとふたたび長い登りがつづく、というような道を歩いていく。昨夜まとまった睡眠をとれなかった割に元気で、恋人に引けをとらないペースでわしわし歩く。

Img_44442 しばらく行くと、木立の間から、立派な富士が見えた。大菩薩嶺から見た勇壮な姿とはまた違って、まるで山水画のように厳粛な佇まいである。

Img_44502 9時、朝日岳に到着する。ごつごつした岩場をよじ登って、うしろを振り返ると、息をのむほどすばらしい眺望が広がっている。一瞬、自分たちが地球のどこにいるのかわからなくなってしまった。よくよく目をこらせば、目指す金峰山がはるか遠くに見晴るかせ、まだまだ道半ばであることを思い知る。(写真右手の、ちょこんと岩が出っ張っているところが、それである)

そこから急な下り坂。手も使って、慎重に下りる。けれどすぐにまた長い登りがはじまって、息があがってしまう。こうアップダウンを繰り返されると、足にもなかなか負担がかかる。山頂に着く前から、帰りのことが心配になる。

それでも、ときどき見える壮大な景色に励まされながら、じりじり進んでいくと、やがてぱっと視界が開けた。ついに、ついに来たのだ。そこは頂上手前のサイの河原。視界を遮るものがなにもない、まさに360度の絶景。

先を行く恋人が、感嘆の声をあげてカメラをかまえる。見れば、八ヶ岳連峰がその姿を現したのだった。富士山はもちろん、ほかにも瑞牆山(みずがきやま)、小川山など、数え切れないほどの山々が見える。さらに、山頂へつづく急な岩場を登りきれば、南アルプスまで見えるのである。

Img_44772_3 Img_45692_3

まだまだ登山初心者の私だけれど、「日帰りで行ける山だと、もうこれ以上の眺めが望める山はないかもしれない」と恋人に言い渡され、うれしいようなさみしいような気持ちになる。

Img_45482_2 Img_45352_2

山頂を極めたあと、ふたたび岩場を下ってサイの河原まで戻り、昼食。よく歩いた分、おなかもへって、パンみっつをあっという間にたいらげてしまう。おかげで口のなかが、ぱさぱさになる。

12時過ぎ、下山開始。気がゆるんだのか、とろんとした眠気に包まれながら来た道を引き返し、約1時間で朝日岳まで戻ってくる。繰り返されるアップダウンに翻弄され、左足首にかすかな違和感を覚えるようになっていた。靴紐を今一度きつく結びなおし、先を急ぐ。

午後になって、富士にも雲がかかり、わずかに山頂が顔を出すだけとなる。早起きをした甲斐があったと喜び合ったのも束の間、無意識のうちに左足をかばいながら歩いていたせいか、今度は右膝が痛み出した。

それで、できるだけ足に負担をかけないように、高低さの激しい段差は巻き、歩幅をさらに小さくして歩く。このころには恋人も足の疲れを訴えるようになる。

さらに樹林帯を歩くこと1時間、ようやく駐車場まで戻ってきた。疲れていたからだろうか、往路よりも復路のほうが圧倒的に長く感じられ、行きにこんなにも歩いたのだったか、と我ながら感心してしまった。アリになったような気持ちでもくもくと歩けば、ずいぶん遠くまで行けるものである。

午後2時半、帰路につく。6時に家に帰り着くと、シャワーを浴びて、家族みんなで食卓に集まる。今日はかわいいかわいい甥っ子の、初めてのお誕生日会なのである。ほんとうの誕生日は明日なのだけれど、父(つまり私の兄)の仕事の都合により、一日前倒しされたのだ。

スパークリングワインで大人の乾杯をしたあとは、手巻き寿司や牛のたたきなど、たっぷりのご馳走に舌鼓。もちろん甥っ子はそんなもの食べられるはずもなく、いつもの離乳食で顔と手をべたべたにしている。

本日のメインイベントは、一升餅をふろしきに包み、甥っ子に背負わせるという儀式。突然ずっしり重いものを背負わされ、みんなの輪のなかに下ろされた甥っ子は、はとが豆鉄砲を食らったような顔つきをしている。それでもなんとか2、3歩はいはいで前進し、そこで力尽きて、こてんと倒れてしまった。その様子がまたかわいくて、一同手を叩いて大はしゃぎ。

大役を終え、ふたたびベビーチェアーにおさまった甥っ子は、目の前に置かれた餅が気に入ったのか、ぺたぺた叩いたり、くちびるを押しつけたりしている。けれどその顔つきは、すっかり男の子らしくなってきているのであった。

甥っ子の勇姿を見届けた私は、一足早く宴席を離れ、ほろ酔いでHくんに頼まれた追加原稿を仕上げて、ばたりとベッドに倒れこんだ。長い長い一日であった。明日の筋肉痛だけが心配である。

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2008/09/08

チャンスはいつも突然

天気予報を見ていたら、明日は快晴、絶好の洗濯日和だとのこと。すると隣の恋人が、にやり。一瞬デジャブかと思う。いつぞやもそうだった。恋人にとって「絶好の洗濯日和」とは「絶好の登山日和」と同義なのだった。ということで明日、急遽、金峰山に登ることに決まる。

古本市関連の用事を済ませたあと、池袋へ行って、これまでに撮りためた甥っ子の写真を現像する。あわせて、とびきりかわいいアルバムも買った。帰ってから、一枚一枚写真を貼りつけ、日付入りの特製アルバムをこしらえる。甥っ子1歳のお誕生日プレゼントにするのである。

それから古本市のメール対応、登山の準備などに加え、Hくんより飛びこみで追加原稿を頼まれ、気がつけばてんてこ舞い。登山に備えて早く寝る計画が、おじゃんになる。

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2008/09/07

年波

恋人と膝をつきあわせて、チラシ及びポスターの内容を考える。一旦決めてしまったあと、しばらく時間を置いて、もう一度たしかめる。そしてデザイナーさんに送る。順調にことが運べば、例年より1週間早く完成する予定である。

午後、2日に生まれたばかりの第3子を抱いて、次兄家族が遊びに来た。産着に埋もれてしまいそうな、小さな小さな女の子。これで4人の孫を持つおばあちゃんとなった母が、張り切って中華風の鶏そばをつくり、家族みんなで食べた。あぁ、私ももう4人のおばさんである。

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2008/09/05

うれしいかなしい

恋人が知人からキーボードをもらってくる。さっそく家にある楽譜を引っ張り出して、キーボードにむかう。

ところが、とても悲しいことに、私は楽譜の読み方をきれいさっぱり忘れてしまっていた。短い時間とはいえ、ピアノを習っていたこともあったのに。

それで仕方なく、覚えている「ねこふんじゃった」と「かえるのうた(輪唱)」ばかり繰り返し弾いた。陽気なメロディを聴きつけてか、甥っ子が寄ってきて、うれしそうに鍵盤を叩く。これを叩けば音が出ると、ちゃんとわかっているようである。

甥っ子はとても楽しそうで、けれど私はとても悲しいのだった。

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2008/09/03

鍛錬不足

今日も朝から仕事。いっぺんにふたつ以上のことを知らせながら、あたかもひとつのものであるように見せる、という難易度の高いことに挑戦する。般若のごとき形相になる。

そんな私を気遣ってか、兄嫁Nさんが夕食に鮭を焼いてくれた。お礼代わりに、Nさんが食事をする間、甥っ子のお守りをする。ほんの十数分抱いていただけなのに、情けないことに、腕がふるふるしてきてしまった。もうじき1歳。いつの間にこんなに成長したのかと、心底驚く。

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2008/08/27

親子がふた組

久しぶりの晴れ。用事を済ませるついでに、車検から戻ってきたSRに乗せてもらう。少しメンテナンスをしてくれたらしく、ハンドル操作が軽くなったと恋人は喜んでいる。

午後は、先日とある落語家さんより仰せつかった、お弟子さんの部屋探しにつきあう。知り合いの不動産屋で、条件に合う部屋を何件か見繕ってもらい、一緒に見学に行く。はからずも、不動産屋のおじさまが大の落語好きで、本職の噺家さんを前に駄洒落を連発していたのがおかしかった。

夕刻、恋人のお母さんが来る。我が家にあがるのもはじめてならば、私の家族に会うのもはじめてとあって、少し緊張しているようにも見える。家族を紹介したのち、私と母、恋人とお母さんの4人で、古本市でもお世話になっている根津のイタリアンレストランへ行った。

ガラス戸を開けるなり、「まあ、どちらも雰囲気がそっくり。別々にいらしてもどちらのお母さんかわかりますよ」と言われて、恋人はなんだか照れくさそうである。

スプマンテで乾杯して、シェフに組み合わせてもらったコースをいただく。ふうわりいい心もちで、なにを食べてもとてもおいしい。ほんとうにおいしい。すっかり幸福になって、家路につく。

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2008/08/13

地味な誘惑

昨日に引きつづき、池袋の家電量販店へ出かける。今度は恋人のパソコンを物色しに行ったのである。

ところがそこへたどり着く前に、「古本まつり」のポスターが目に入ってしまったので、ついつい足はそちらへ向かう。そこで過ごした時間、約1時間半。使ったお金、ふたり合わせて7千円。まったく、いったいなにをしに池袋へ行ったのだかわからない。

家へ帰ると、兄が会社の同僚を招いて、焼肉パーティをしていた。兄の面倒くさがりぶりから考えると、とても珍しいことである。とはいえ、大変なのは兄嫁Nさんで、座って談笑するだけの兄に代わって、忙しく立ち働いていた。無精な兄ですみませんと、心のなかで謝っておく。

寝る前に、オリンピック女子バレーボールを観戦。まぶたがくっつきそうになるのを必死に我慢して、フルセット見届ける。日本、辛くも勝利。

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2008/08/12

文明人

恋人のお姉さんを招いて、朝ごはんを一緒に食べる。そのままお姉さんを残し、大急ぎで谷中へ行って、古本市の用事をひとつ済ませてくる。

午後、尾道でお世話になった方々にメールをしたためる。あの町で私たちの感じたことを、そっくりそのまま伝えるために、ああでもないこうでもないと頭を悩ませていると、ひどい雨になった。

雨の止むころを見計らって、恋人と待ち合わせ、外づけハードを買いに行く。春に新しいカメラを買ったせいで、どんどんどんどん新しい写真が増え、パソコンの空き容量がすっかり減ってしまったのである。文明の利器の隣に、さらなる文明の利器が並び、今度は机上の空きスペースが減ってしまう。

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2008/08/11

日常生活に戻る

たっぷり9時間寝て起きる。さっそく旅の記憶を手帳に書きとめ、あちこちでもらったレシートを整理する。ほんとうに濃密な旅だった。あまりにも濃密すぎたので、まだぴたりと焦点があわない。

夜、福島より上京してきた恋人のお姉さんに会う。この春より看護師として働きはじめたというお姉さんは、前に会ったときよりも少し痩せて、さらにきれいになっていた。しばらく話したのち、明日の朝食に招待して別れる。

それから慣れ親しんだお風呂にお湯をはって、久しぶりに半身浴をする。おともは堀江敏幸の『雪沼とその周辺』。底流にたゆたう透明な哀しみの力に、1話目から心を打たれる。

*夏旅の日記は、書くのに 途方もなく時間がかかってしまうので、あとからのんびり埋めていきます。

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2008/07/30

鉢合わせ必至

近所の複合型商業施設が正式オープンの日を迎えたので、さっそく家族総出で見学に行く。色とりどりの商品や花が並べられた間を、たくさんのひとたちが行き交い、なんとも賑やかである。一昨日見学に来たばかりなのに、ふたたびぐるりと一巡して楽しんだ。

夕方、愛犬ペチを病院に連れて行く。どうしたことか、最近、からだに触れると甲高い声で鳴くようになったのである。もしや1月に手術した結石が再発したのでは、と心配になってかかりつけの獣医に診てもらったのだけれど、尿検査も触診も異常なしとのこと。原因が判然としないのは困るものの、大病ではなさそうなので、ひとまず安心して帰る。

夜、恋人とつれだって、ふたたび複合型商業施設内の書店をのぞきに行くと、去年までアルバイトをしていた歯科医院の面々に遭遇する。院長は、真横に生えた私の右下8番(親知らず)を抜いてくれた恩人でもあり、恋人の主治医でもあるのだ。あのころ一緒にバイトしていたひとたちは、もうほとんど残っていないと聞いて、少しさみしい気持ちになる。

それにしても、なにもない町のこと。これからここで、たくさんのご近所さんと顔をあわせることになるのだろう。

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2008/07/14

ため息を誘う喜劇

兄嫁Nさんの誕生日。谷中はへび道のMais D.cuirで買った、錨(いかり)型のネックレスを贈る。そのプレゼントは、なにより甥っ子の気に入ったようで、兄嫁の腕に抱かれながら錨を引っぱり、あわよくば口に入れてしゃぶらんとするから、油断も隙もない。

午後、一緒にセールへ行く。先日ひとりで挑んだときに、Tシャツ2枚しか買えなかった反動か、今日は次から次に欲しいものが現れて悩ましい。結局、パンツ2本とワンピース1枚を買ってしまった。これから夏旅も控えているというのに。あぁ、がんばって働かねば。

寝る前に『クワイエットルームにようこそ』を観る。原作は、芥川賞候補にもなった松尾スズキの同名小説で、 映画の監督・脚本も松尾氏が手がけている。

内田有紀が演じる主人公は、28歳のフリーライター。まさに私と同年齢、同職業である。けれどそういうことは、この際どうだっていい。安易な共感を拒むくらい勢いのある映画で、一旦観はじめると、ジェットコースターに乗ってしまったのと同じで、もう最後まで降りられない。

喧騒と混乱と狂気のなかで次々に切り替わったかと思うと、次の瞬間には静寂のなかでひたと一点を見つめるカメラワークに、脱帽。強弱のつけ方が抜群に上手だ。最後までドタバタの続く『恋の門』が疲労感を誘ったのに対し、こちらはエンドロールを観ながらしっとりしたため息のこぼれる映画だった。

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2008/07/09

ほおずき市でほっかむり

Img_2056 駒込大観音こと光源寺の「四万六千日 ほおずき千成り市」に、お手伝いとして飛び入りで参加する。このほおずき市は、プロを一切入れずに、テントの組み立てから当日の進行まで、すべて地域住民を中心とした有志で行う、まさに“手作り”のお祭りなのである。

今回私は、「萬福横丁」と名づけられたテントの一角で、エスニックチキンライスの屋台を手伝った。といっても、大量のピーマンを切っただけで、あとはほっかむりにエプロン姿のまま、一般客に交じって市を楽しむ。

仕事に行っていた恋人も、遅れて顔を出す。さらに、家族のほとんどが遊びに来てくれたのに加え、まだ生後40日の赤子を抱いた知人にまで遭遇。しまいには5、6家族が入り乱れ、私のまわりはすっかり賑やかになった。

なかでも一番浮かれた様子を見せていたのは、10ヶ月の甥っ子である。彼は終始ご機嫌で、誰彼かまわず、ベビーカーのなかからにこにこと笑顔を振りまいていた。将来の夢は飴細工職人、と公言してはばからない姪っ子も、本物の飴細工職人の技に釘づけとなり、密かに弟子入りを決意したらしい。ちなみに彼女が職人にオーダーしたのは、「ザリガニ」であった。

市は大盛況で、萬福食堂も軒並み完売。遊び歩いていた私も、最後だけはパクチー係を担当し、チキンライス完売の瞬間に立ち会った。

フルーツサングリアと、夜風にたゆたうジャンゴ楽団の演奏に酔いしれて、ひどく幸福な気持ちで家路につく。

Img_2036 Img_2119_3  

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2008/07/01

ある家族の肖像

Img_1803_2 母62歳の誕生日。

パーティに備えて、兄嫁Nさんとリビングの掃除をしたり、テーブルを移動したり、取り皿やコップを用意したりする。それから料理にとりかかったのだけれど、いかんせん十数人分の食事など用意したことがないので、私もNさんも途方に暮れてしまった。結果、Nさんは分量を読みきれずに「いつもの味が出せない」と落ちこみ、私は私でひどくもたつき、スタートを予定より1時間近く後らせてしまった。

それでも兄嫁ふたりと私で計10品をつくりあげ、いざテーブルについてみると、一応の格好はついている。午後7時の少し前、誕生日の母を誕生日席に座らせると、家族全員(12名)で乾杯をして、パーティが始まった。

仕事に行っていた恋人も、少し遅れて登場。父の向かいに座って、晩酌のお相手を務めてくれた。実はこのパーティ、「父の日」に出張で不在だった父も、母と並ぶ主賓なのである。私はふたりの間に座り、手巻き寿司を巻いたり、お酒を注いだりして、めったにやらない親孝行とやらに精を出した。

今日一番の笑い声が起こったのは、父に孫(私にとっての甥)を抱かせたときだった。照れくさいのかどうか、生まれてもうじき10ヶ月になるというのに、父はまだ一度も自分の腕で孫を抱いたことがなかったのである。

初めて父の膝に乗った甥が、途端に不安そうな顔になるものだImg_1729から、一同大笑い。父は父で、どうあやしたものか考えあぐねているようで、こちらもちょっと困り顔。そのふたりの顔が似ているところがまた、私たちの笑いを誘うのだった。

そんなこんなで、笑いに彩られたいい夜であった。でもどうしてだか、写真を見返していると、じわり涙がにじんでくるのだった。

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2008/06/30

真意やいかに

明日、家族そろって母の誕生日会をすることになったので、兄嫁Nさんと買出しに行く。もちろん甥っ子も連れて。

パーティだからと、ちょっと奮発して高級スーパーまで足を延ばしたら、あっという間に予算オーバー。やり慣れないことをすると、こうなる。でもこういうことに使うお金ならばと、思い切って買う。

夜は仕事。遅まきながら、最近になってやっと自分の仕事のペースがつかめてきて、どのくらいの時間でどれだけ書けるか、なんとなく予測できるようになった。ただし、それはこの広告の仕事に限ったことであって、ほかのことにはてんで応用が利かないのだけれど。

よいコピーがひねりだせたように思えたので、書きあげたものを恋人に読ませてみると、「それっぽい」という評。はたしてそれが褒め言葉なのかどうかは、ついにわからないままである。

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2008/06/16

線引き

お金にならない仕事をする。いや、お金にならないのだったら、仕事とは言わないのかもしれない。趣味、とでも呼べばいいのだろうか。でもそれとも少し違う気がする。今は趣味としか説明の仕様がないけれど、いずれはお金を生み出す仕事につながるかもしれないこと、ならどうかしらと、くどくど考える。

夜、次兄の相談にのる。アーティスト(芸術家)を志す彼もまた、お金になるかならないかの狭間で、作品を生み出しているのだった。本意ではなくとも、「書く」という行為でいくばくかの収入を得ている私のほうが、あるいは兄より恵まれているかもしれない。

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2008/06/02

毎度のこと

先日借りたDVDを返却に行くついでに、兄嫁Nさん、甥っ子と散歩。甥っ子はやはりお出かけが大好きらしく、ベビーカーのなかでじっとおとなしくしている。最近は特に新幹線がお気に入りで、「新幹線どこ?」と尋ねてみると、頭をきょろきょろさせてまわりを探すようになった。それがまた、いちいちかわいい。私はすっかり叔母バカである。

いよいよ締切が近づいてきたので、夜は根をつめて仕事をする。少し特異な依頼だけに、なかなか捗がいかない。たっぷり時間をもらったのに、どうして少しずつでも書いておかなかったのかと、またも過去の自分を責める。でも原稿は埋まらない。

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2008/05/30

家族食事処

使用期限が明日に迫った割引券を握りしめて、ファミリーでファミリーレストランへ行く。でも私たちのほかにファミリーは一組だけで、あとはみんな友人と、あるいはひとりで来ているのだった。

やれ少子化だ、孤食化だと、眉をひそめる輩もいるだろう。けれど、いかめしい顔でそういうことを論じるひとたちが、家族そろって食卓を囲む姿だって、私には想像できないのだった。

それから数時間後、今度はおなかをすかせて帰ってきた恋人につきあって、また同じファミリーレストランへ行く。こちらはファミリー予備軍である。今のところ。

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2008/05/14

旅立つ

未明、我が家の老犬トムが、黄泉に旅立つ。人間の年に換算すると、約100歳。大往生だった。

私がまだ小学生だったころ、家族で旅行に行く間に、当時飼っていたミニチュア・シュナウザのペペをペットショップに預けた。そこがとんでもないところで、数日ののち、ペペを迎えに行くと、どうも妊娠してしまったらしい、と告げられたのだ。今のご時世なら、あるいはペットショップを相手取って裁判、などということにもなりかねないけれど、私たち家族は喜んだ。新しい家族が増える、と。そうして生まれたのがトムだった。

トムには兄弟が2匹いた。でも父親が大きい種類の犬だったのか、ひどい難産で、とうとう2匹とも産声をあげることが叶わなかった。

たった1匹だけ残ったトムを、私たちはさんざん甘やかした。そのせいでトムは、まるで人間のような顔をして育った。ひとの顔色をうかがい、悪事をごまかし、夜は必ず誰かのベッドで眠り、ケージに閉じこめると喉が枯れるまでしつこく鳴きつのった。

そんなトムも年をとり、いつしかひとところにじっとうずくまることが多くなっていった。ところが、突如痙攣を起こした夜を境に、どこかのネジがはずれたかのように、昼も夜もなく叫びつづけ、うろうろと辺りを徘徊するようになった。壁にからだをこすっても、棚に頭を突っこんでも、それは止まることがなかった。

だから仕方なく、大きな段ボールのなかに、トムを入れた。そこでもトムは、ぐるぐると歩きまわりながら叫びつづけた。その姿があまりにも苦しそうだったので、このまま苦しみつづけるのならいっそ、と悲壮な決意を胸に、トムを抱えて動物病院の扉を叩いたこともあった。けれど医者は頑として首を縦に振らなかった。

ある日、トムが痙攣しながら血を吐いた。下になった頬が真っ赤に染まるほど、とてもたくさん。ああ、いよいよそのときがきたのだと、私たちは覚悟を決め、段ボールのまわりに集まって泣いた。けれど痙攣がおさまると、トムは再び立ち上がって歩きまわり、いつもよりさらに激しく吠え立てた。

そんなことが、何回かつづいた。そのたびに私たちは、今度こそ危ないのではないかと、集まって涙をこぼしたけれど、トムは気丈に生きつづけた。最初の痙攣から、もう1年が経とうとしていた。

最期のときは、突然訪れた。トムは夜の闇のなかで、あるいは朝の雨音を聞きながら、人知れず旅立っていった。触れてみると、驚くほど冷たく、硬く、もうそこにトムのいないことが一瞬でわかった。兄嫁Nさんの手向けた花を抱いて、トムは静かに我が家を去った。

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2008/05/11

あの日の決意

2008_05110003_2 自分を特別親不孝だとは思わないけれど、特別親孝行だとも思えない。でも、ひとつだけ、心に決めていることがある。それは、両親を最期までしっかり看取ること。ぜったいに先立たないこと。

誰にでもあることだと思うけれど、生への執着の揺らいだことが、私にもあった。たぶん、今よりもさらに、自意識過剰だったのだろう。でも不思議なことに、先の決意は、このころに芽生えた。そして私の心にどっしり根付いた。

両親にもらったのと同じだけのものを、きっと私は返すことができない。だからせめて、あの決意だけは手放さずにいたいと、母の日に寄せて思うのだった。

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2008/05/09

ふたつめの贈り物

2008_05090009 恋人につづいて、兄嫁Nさんが誕生日プレゼントをくれた。つい数ヶ月前に谷中にできたばかりのお店で買ったというプレゼントは、包みをとくのが惜しくなるほど愛らしく飾られていて、思わずうっとりしてしまう。何枚か写真を撮ったあとに、ため息まじりに箱を開けると、なかには革のカードケースが収められていた。

Nさん、どうもありがとう。大切に、でもわしわし使います。

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2008/04/23

私はおばさん

せっかくのぽかぽか陽気なのに、一日中家にこもって原稿を書いていた。なにしろ今日が締切なので。

マイクロアレイだとかPGxだとか、私にはてんで意味のわからない専門用語と格闘していると、意識がはらはら散ってゆくので、気分転換に、ときどき、生後7ヶ月の甥っ子をあやしてみたりした。はちはちと太った甥っ子は、そのむっちりした腕を祖母(彼にとっては曾祖母)に、「レンコンみたい」と評されていた。言い得て妙だ。でもとてもかわいい。赤ん坊ってこんなにかわいいものだったか。

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2008/04/15

戦利品

母がパスポートを取りに行くと言うので、一緒にくっついて街へ出る。ところが窓口に出向いた母は、受付の人と一緒になってひとしきり笑ったかと思うと、なにも受け取らずに戻ってきた。聞けば、交付は4月18日以降と手紙にあったのを、見落としていたらしい。

それからふたりで買物に興じる。久々に買ってやるぞ、と気合を入れてあちこちまわったのに、なかなか気に入ったものに出会えない。気持ちばかりが空回りして、もどかしさに焦れていたところで、ようやく麻のワンピースを購入。少々値は張ったけれど、たまには良しとしよう。

仕事帰りの恋人と合流し、3人で食事をして帰る。

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2008/04/10

ひととせ

Photo 7人乗りのワゴンを借りて、家族で桃の花見に出かけた。ところは勝沼で、ハンドルを握るのはこの日のために仕事を休んだ父。その父に誘われた私の恋人も同行する。

実は去年も、ちょうど同じ日に同じ場所を訪れた。あの日は澄んだ青空が広がっていたけれど、今日はあいにくの雨模様。でも「雨にけぶる桃ってのも、案外風情があっていいかもよ」という父の言葉どおり、しずくをまとってたおやかに光る花は、去年とはまた違った姿で私たちを楽しませてくれた。

傘を手に、数十種類の桃を眺め、花のトンネルをくぐり、写真を撮りあう。そうしながら、「家族」をしているなぁと、ぼんやり考えた。それは「家族である」ということと、似ているようで少し違う。

Photo_2去年も訪れた、小高い岡の中腹にあるレストランで食事をしながら、今年は参加者がふたり増えたね、と話した。すると父が「来年は運転手ごと小型バスをチャーターして、もっと大人数で来ようか」と、冗談とも本気ともつかないことを言い出した。父はときどき、真面目な顔をして突拍子もないことを言う。でもなぜだか私は、もうひととせのちの花見を楽しみにしているのだった。

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2008/02/02

バースデー親子

夕方まで仕事。書いても書いても先が見えない。

夜は次兄(2月3日生まれ)とその娘(2月2日生まれ)の誕生日会にかこつけて、家族でしゃぶしゃぶを食べに行く。食べ放題コースなので、つい張り切って食べ過ぎてしまい、苦しい。

腹ごなしに馴染みの古書店をのぞきに行くと、ちょうど豆まきイベントが終わったところであった。残っていた豆まきセットをふたつ買い、その足で兄家族が住む家まで行って、ひとつお裾分けする。

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2008/02/01

冬晴れ

Uさんのお手伝い。ようやっと名刺入力が終わる。

夕食後、術後の経過を見せに、ペチを病院へ連れて行く。順調そうでほっとする。

それから仕事。これはかなり気合いを入れなければ終わらないと気づき、焦る。

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2008/01/31

私たちは優勝者です

近所にできたペットショップに行ってみる。膀胱結石の手術をしたペチのための、特殊なドックフードを探しにきたのである。それを食べれば、もう同じ種類の結石ができないようにからだを整えてくれるらしい。その値段を見て、びっくり。人間顔負けの高価さである。

もう少し割り引いてくれる店をなんとか探し出すことに決め、代わりに200円で売られていた犬用のスウェットを買ってみた。犬に服を買い与えるのは、これが初めてである。紺色に黄色の文字で「WE ARE THE CHAMP」と書いてあり、フードまでついていて、なかなかかわいい。ペチがタートル風ガーゼ服を脱ぐ日がきたら、2匹に着せてやろうとにやつく。

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2008/01/25

感動の再会

広尾にて取材。ディレクターHくんが地図を見誤ったため、遅刻しそうになり、最後は走らされる。その業界では名の知れた社長のインタビューと聞いていたので、緊張して門をくぐったのだけれど、いらしたのは副社長だった。Hくん、またも間違える。

帰ってから、ペチを迎えに行く。3日前に手術したばかりだということが信じられないほど元気である。傷口を保護するため、タートルネックのようなガーゼ服を着せられていて、なんだか可笑しい。

しっかり抱いて帰り、いよいよモモとの再会。なにも知らないモモの待つ部屋へ、ペチを放つ。モモは驚いたようにペチに駆け寄り、短いしっぽを振りながらくんくん匂いをかぎまわる。そして数日振りの我が家にはしゃぐペチのあとにくっつき、離れようとしない。モモの不調は、やはりペチの不在が原因だったのかと、家族みんなで微笑ましくその様子を見守った。

夜、本谷有希子『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』を読む。一部では絶賛されていた本書、たしかに比喩は上手だと思うけれど、手足がばらばらに動いているようなまとまりのなさを覚え、最後まで入りこめずに終わった。性格が悪い、というのと、頭が悪い、というのは違うはずだ。

口直しに『イカとクジラ』を観て眠る。

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2008/01/24

寒太郎

冷たい北風の吹き荒れるなか、朝一でモモを病院に連れて行く。昨日よりかいくぶん元気になったように見える。ガラス越しに入院中のペチと対面させてみたものの、匂いが遮断されているため、お互いにそれと気づかない様子だった。

夕方、東銀座の路地裏にて、次の取材。楽しそうに働いているひとに会うと、働くっていいなあと純粋に思う。

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2008/01/23

親子愛

ペチの母親、モモの様子がおかしい。ごはんも食べず、じっとひとところにうずくまって震えていたかと思うと、突然聞いたこともないような声できぃきぃ鳴くのである。

私は締切があって家を空けられないので、兄に頼んで病院へ連れて行ってもらう。検査の結果は異常なし。もしやペチの不在が原因では、と推測する。

夕刻、原稿を提出し、ハンバーグのたねとホールトマトの缶詰で、ミートソーススパゲティを作って食べる。それから明日の取材の準備をしていたのだけれど、モモの不調がさらに悪化。からだを硬くしてその場に座りこんだまま、おもらししてしまう。やはり心因性のものとしか考えられない。これも愛かと、胸を打たれる。

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2008/01/22

無事を祈る

朝から初めての電話取材。情けないほど緊張し、口ごもらないように原稿までつくっておいたのだけれど、相手がよくしゃべる人で助かった。

正午ぴったりに、ペチを病院へ連れて行く。いよいよ膀胱結石を取り除く手術をするのである。興奮して震えるペチを預け、そのままふらふらと近所の書店めぐりをする。ついでにスーパーにも寄って、豚肉を購入。昨夜の鍋に入れて食べる。

無事に手術が終わったとの連絡が入ったので、夜、ペチのお見舞いに行く。ペチはまだ麻酔が醒めたばかりで、焦点を結ばない目をしていた。ともかく無事でよかった。

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2008/01/19

ドッグドッグ

重い腰をあげて、ぼちぼち仕事。

夕食後、愛犬ペチを動物病院へ連れていく。人間ドッグならぬドッグドッグということで、あれやこれやたっぷり検査してもらう。やはり手術が必要になりそうだ。しかも心音に少し雑音が混じっていると聞かされ、不安に駆られる。

いつかペチを看取らなくてはならないという、当たり前だけれどこれまで考えてこなかったことについて、急に考えるようになった。

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2008/01/15

病の気配

Uさん宅にてお手伝い。郵便局へ行ったり、コピーをとったりして、事務員のように働く。

夕方、近頃様子のおかしい我が家の愛犬を、近所の動物病院へ連れていく。どうやら膀胱に結石ができているらしく、その種類や大きさいかんによっては、手術が必要になるかもしれないと言われ、どぎまぎする。

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