新しくも古い
春の古本市にむけて、今年最初の会議が開かれた。新メンバーも何名か加わってくれたのだけれど、1人のライターさんを除いて、みぃんな知り合い。日程、役割分担など決めたのち、近くの居酒屋で飲んで帰る。
昔録画に失敗して、途中で切れてしまった『ヒトラー最期の7日間』をBS2で放送していたので、しまいまで観る。予想以上に長く、3時過ぎにようやく布団に入る。
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春の古本市にむけて、今年最初の会議が開かれた。新メンバーも何名か加わってくれたのだけれど、1人のライターさんを除いて、みぃんな知り合い。日程、役割分担など決めたのち、近くの居酒屋で飲んで帰る。
昔録画に失敗して、途中で切れてしまった『ヒトラー最期の7日間』をBS2で放送していたので、しまいまで観る。予想以上に長く、3時過ぎにようやく布団に入る。
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三河島まで散歩に出かける。洗濯物をつるした竿を、Y字の棒に挟んで、えいやっと持ち上げるタイプの物干し竿が、澄ました顔をして民家の軒先に並んでいるのを見て、びっくりする。ベランダ全盛の時代になって、さぞ肩身の狭い思いをしているだろうと思ったら、こんなところで活躍していたなんて。なんだか旧友に再会したような懐かしさを覚える。
夜、春の古本市にむけた会議に出席する。どきどきするような報告が相次ぎ、胸がざわめく。5年目を迎える来年は、どうやら節目の年になりそうである。
会議のあとは、近所の居酒屋に場所を移して、忘年会が開かれた。実は、と恋人の就職ならびにふたりの結婚のことを報告すると、みんなぱっと顔をほころばせ、我がことのように喜んでくれる。それでついついお酒がすすんで、2時まで飲んだくれてしまう。
心から祝福してくれるひとがいるというのは、なんて幸せなことだろう。
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図書館へ行くついでに、ふた駅先まで散歩をする。散歩の途中で、かしまし娘のYちゃんより、とてもうれしい報せが届く。やったやったと、今にもスキップせん勢いで喜ぶ。そして、にまにましながら歩いて帰る。
夜、古本市で知り合った方より、涙が出るほど温かい想いのつまったメールをいただく。こうしてつながり、結ばれた縁は、私と恋人の一生の財産である。
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眼鏡を新調する。出かけるときはコンタクトなので、眼鏡は家でしかかけないのだけれど、似合う似合うと同行者におだてられて、デザイン性の高いものを選んでしまう。
夜、千駄木のブックカフェにて、月に一度の古本市の集まり。先月は私がしゃべったので、今回は私からお願いして無声映画伴奏者の方にお話ししてもらう。フィルムの保存活動にも関わっていらっしゃる方で、興味深いお話をたくさんしてくださった。
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古本市の年表を作り、資料をファイルにまとめる。今夜、千駄木のブックカフェにて月に一度開かれる集まりで、恋人と主催する古本市についてしゃべることになっているのである。
おおかたの準備が整ったころになって、雨が降り出した。おまけに気温もぐっと下がる。大勢を前にしゃべるような度胸も技量もないけれど、誰も来なかったらさみしいなぁとぐずぐず考えているうちに、雨があがる。そのすきに自転車で会場のカフェへ行ってみると、すでにお馴染みの顔がちらほら。最終的には12名のひとが集まってくれて、カフェの椅子もすべて埋まる。うれしい。
それで気を大きくしたのか、30分の予定をはるかに超えてしゃべってしまった。こんなにも寒い平日の夜、わざわざ集まってくれたひとたちに、少しでも楽しんでもらえたらならいいのだけれど。
勝手にしゃべって勝手に楽しんで、日付が変わるころに帰宅。熱いお湯にざぶんとつかる。
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亀戸にて取材。現地へむかうときには、バケツを引っくり返したようなひどい雨だったのに、取材を終えて出てくると、もう止んでいる。畳んだ傘をぶらさげて押上まで歩き、地下鉄で帰る。
午後、ふたたび豪雨。恋人とふたり、川のようになった道をばしゃばしゃと歩いて、路地裏のカフェへ行く。あんまりにもすごい雨で、思わず声を出して笑ってしまう。ようやっとカフェにたどり着いたときには、ふたりとも濡れねずみになっていた。
雨音をBGMにシナモントーストをかじりながら、卒業論文を執筆中の大学生に、インタビューを受ける。テーマは古本市について。書店への就職が決まっている彼は、私なんかよりよほどしっかりしていて、ずいぶん頼もしい若者がいるものだとびっくりする。ふにゃふにゃの自分を恥ずかしく思いながらも、たっぷり2時間しゃべって外へ出てみると、またも雨は止んでいた。
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重い腰をあげて、古本市で使った備品を整理し、売上の集計をする。これが予想以上に大変で、結局、部屋が薄闇に満たされるまでかかってしまう。
『夜になるまえに』を観る。主演はハビエル・バルデム。私と恋人が初めてふたりきりで観た映画『海を飛ぶ夢』でも、主演を務めていたひとである。
映像も美しいし、カットも凝っているのだけれど、どうしてか深くは入りこめず、最後まで焦点を結ばないままにおわってしまう。でもバルデムの演技はすばらしかった。あの映画と同一人物とは到底思えない。次は『ノーカントリー』を観よう。
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車で古本市の会場のひとつだったお寺へ行き、最後の掃除をして、荷物を引きあげる。帰り際、住職の奥さまと話をした。「古本市をやると、どんなことが学べるんですか」と笑顔で尋ねられ、それはまさにここ数ヶ月の間、恋人とふたりでずっと考えつづけてきたことであったので、思いがあふれてつい饒舌になってしまう。
とにもかくにも、これで一通りのことに片がついた。どさり、と肩の荷の下りる音が聞こえたような気がする。
それから、かしまし娘Yちゃんのお宅へお邪魔する。昼から来ているS、Fのふたりは、もうすっかりくつろいだ様子で出迎えてくれた。特に、夫に子どもを預けて出てきたSちゃんは、家のことを気にかけながらもはしゃいでいるように見える。
みんなの持ち寄ったお土産を食べながら、他愛もない話をし、旅の計画をたて、駅前のダイニングバーに場所を移してさらに飲み食いし、Fちゃんの終電間際になってようやく帰路についた。かれこれ15年もともに過ごしていながら、初めて知る事実があって、ひどく驚かされたけれど、楽しい夜であった。
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祈りが通じたのか、古本市当日の朝はよく晴れた。
約2時間半かけて各会場(3ヶ所)の設営をし、いよいよスタート。たくさんのお客さんが来て、本や雑貨を買い、お茶を飲み、展示をのぞき、紙芝居に見入り、パフォーマンスに驚き、おしゃべりに花を咲かせ、思い思いの時間を過ごしていった。
迫力の紙芝居を演じてくださったのは、街頭紙芝居師の「じゃんぼ」こと、おかもとりよさん。
会場のひとつには、一日限りの『物怪図書館』も登場。夏旅で運命的な出会いをした、倉敷出身の方が手がけてくださった。
ヤギのメリーさんも登場。ヨーデルにのって、次々と不思議な人形を作り出しては、お寺の軒先に吊るしてゆく。
カフェや雑貨屋も、一日だけの出張店舗をオープン。
古本のディスプレイも、回を重ねるたびにかわいく、実用的に。
笑顔に彩られた、よき一日。
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古本市前日。雨がやむのを待って、車で荷物の搬入をする。一度帰って、今度はSRで出かける。細々したものを買い足して、ふたたび会場まで運ぶ。
帰ってから、駄菓子屋の袋を印刷したり、看板を作ったり、各会場に持っていく荷物の仕分けをしたり、会場の設営見取り図を描いたりと、最後の作業に励む。机の上に貼りつけておいた「やるべきこと付箋」が、1枚1枚減っていく。
いよいよ明日。
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古本市で街頭紙芝居をやっていただくのにあわせて、駄菓子を売ることにしたので、兄嫁Nさんと甥っ子につきあってもらって、日暮里の駄菓子問屋へ買出しに行く。
数年前までは、駅前の路地を入ったところに、古い家屋が軒を連ねる駄菓子屋横丁があり、ちょっとした観光名所になっていた。それが大規模な再開発にともなって姿を消し、ほとんどの駄菓子屋が店を畳んでしまったのである。今は、ぴかぴかだけれどすかすかのビルに、わずかに2軒が残るだけとなっていた。
その2軒をはしごして、どっさり駄菓子を買いこむ。子どものころから考えると、まるで夢のようである。なにしろ、蒲焼さん太郎も酢だこさん太郎もうまい棒も人参もミックス餅もサイダーヨーグルも、なにもかも箱買いできるのである。甥っ子が寝ついたのをいいことに、ふたりできゃあきゃあ言いながら、楽しく買物をして帰る。
それからがまた楽しい。山と積まれた駄菓子のなかから、思い思いのものを選んで袋詰めし、福袋を作ったのである。福袋というからには、値段以上のものを入れる必要があるわけで、儲け度外視・楽しさ重視で、100円の福袋に110~130円分の駄菓子を詰めこんだ。
すぐに売り切れちゃったらどうしよう、追加する?などと取らぬ狸の皮算用をしながら、大人になった喜びを噛みしめたのであった。
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今日も一日、古本市の準備。午前中はいつものシモジマへ行って、不足しているあれこれを買いこみ、午後は会場のお寺で作業をし、さらに実行委員会メンバーの古書店へ寄って、当日使う荷物の仕分けをし、やっと一息。まだまだ考えるべきことがたくさん残っていて、落ち着かない。
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数日後に迫った古本市の準備を、じりじりと進める。やってもやっても終わりが見えない。ひとつ用事を済ませるついでに、夜の散歩をする。外はもうすっかり秋の気配。
それから阪神対巨人戦を観、録画しておいた木下恵介のドキュメンタリーを観、布団に入る。恥ずかしながら、木下恵介があんなにも社会派だったとは知らなかった。
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清々しい気持ちで目を閉じたはずなのに、どうしてだか眠りが浅く、明け方に目覚めてしまう。仕方なく読みさしの本を開き、睡魔に導かれるのを待ってから、ふたたび目を閉じる。
午後、Hくんより追加原稿を依頼されて、ひと仕事。ちょうどそれを仕上げたころ、兄のアトリエに知人数人が遊びに来たので、もらいものの大福とお茶を出して、しばらく話をする。谷中という町を介して、私の知人と兄がつながったのが、おもしろい。
恋人と進まない自転車をこぎに行った帰り、男友達より電話がかかってくる。最近なにしてるの、と訊かれたので、古本市の準備に追われてる、と答えると、化石みたいなことしてんねと返された。褒め言葉であろうか。
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恋人が、これからの人生を左右するとても重要な仕事に出かけるのを見送って、私も仕事に精を出す。がんばって夕方には仕上げ、その勢いで古本市関連の仕事までどんどん片づけてしまう。
恋人の帰りを待って、千駄木で古本市の助っ人集会。たくさんの人たちが集まってくれて、それだけでもうとても励まされる。昨日、どこにも味方なんていないのかもしれない、と世を儚んでひどく落ちこんだのが嘘のように、一気に心が軽くなった。これでどうにか当日を乗り切れそうである。助っ人さんたちには、いったいどうお礼をしたものやらわからない。
外に出ると、雨が降っている。みんなで肩を寄せ合うようにして、近所の居酒屋へ移動し、楽しく飲んだくれる。帰るころになっても、まだ雨は降りつづいていて、傘を差しながら延々自転車を押して帰る羽目になったけれど、それでも清々しい気持ちのまま眠りについた。
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朝から仕事。思ったより捗がいって、焦る気持ちがやっと落ち着く。いつもながら、もっと早く手をつければよかったという思いは変わらないけれど。
午後は古本市でお世話になるお寺へ行って、あれこれ作業をする。さらにもう1軒まわって、打ち合わせをしてから帰る。
背中とおなかがくっつきそうなほど空腹で、近所のインドカレー屋へ行って、思うさま食べる。午前中とは一転、なんだかとても落ちこんでいたのだけれど、恋人も同じであることがわかり、少しだけ気持ちが上向いた。帰ってもりもり仕事をする。
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今日も朝から古本市の準備。午前中は家で作業をし、午後は自転車で町をめぐる。
予定していた仕事に片をつけたあと、路地にひっそりたたずむお気に入りのカフェへ行く。そこでケーキセットをいただいて、ようやく人心地ついた。午後4時のお茶会。
注文を受けるたびにドリップしてくれるコーヒーもおいしいのだけれど、ほんのり温かい手作りケーキが、私は好きなのである。ケーキに添えられた、ふわっとやさしい生クリームがとてもおいしくて、お皿についたものまできれいにすくって食べてしまう。ほんとうは生クリームは苦手なのに。
ぎすぎすとんがっていた心まで、ふわっと包んでもらって、家に帰る。そして今度は、パソコンにむかって仕事をする。
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古本市の準備に追われ、恋人のSRで街を駆けまわる。途中に立ち寄った文京シビックセンターで、1年半ぶりに展望台へのぼる。あまり知られていないことなのだけれど、実はここ、無料で東京の街を一望できる穴場なのである。
上から見下ろす東京の街は、とても広い。そして、とても窮屈そうである。けれどそこに、人々の生活がしたたかに息づいてることを、私たちは知っている。その意味で東京は、少しも生活の匂いが感じられないドバイとは、まるで性質の違う都市である。
それにしても、チラシの詰まったリュックは、やっぱり重い。おかげで何度も引っくり返りそうになってしまった。そうしたらきっと、甲羅を返されたカメのようになるのだろうと想像して、バイクのうしろでにたにた笑う。
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秋の気配がしのびより、ぐっと寒さが増すなか、朝から古本市の準備。仕上げた書類をコンビニでコピーしていたら、一緒にいた恋人の携帯に、友人から電話がかかってきた。聞けば、すぐ近くまで来ているとのこと。それで、3人で夕ごはんを食べることになった。
実はその友人、つい今しがた、3年間彼女と暮らした部屋を引き払って、ひとりの生活をはじめたところなのであった。つきあいはじめから数えれば、8年。短からぬ年月である。
けっこうな喪失感だよ、とつぶやく友人にかける言葉が見つからず、仕方なく下手な冗談ばかり言って彼を苦笑させていた私たちもまた、頬をなでる秋風に切なさを覚えずにはいられなかった。あとは時間にすべてを委ねるしかない。
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日が落ちるまで、古本市の準備。あちこちの書店にチラシを送付する。一覧を作ってシール印刷でもすれば速いのだろうけれど、機械音痴な私のこと、どうやってそれを実現するか考えるのに時間がかかってしまいそうなので、せっせと宛名を手書きする。その数、24通。
つづいて赤ペンに持ち替えて、1通1通に「チラシ在中」と書き添えると、ふたたび黒ペンを持って封筒をひっくり返し、今度はこちらの住所・氏名を書いていく。
それからそれぞれの書店の広さや、店主との親しさまで考えながら、チラシの枚数を加減して封入する。なかには東京から遠く離れた書店もあって、その佇まいを想像するだけで楽しい。
最後にそれを近くの宅急便センターまで持っていって、おしまい。チラシたちは旅に出たのだった。
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古本市のチラシを配りながら、自転車で上野まで足を延ばす。ちょうどおなかがすいたので、恋人の故郷、福島のアンテナショップで十割そばを食べた。量は多くないけれど、おいしい。
一旦帰宅したのち、古本市関連の集まりに顔を出した。ブックカフェのカウンターでクーバリブレを飲みながら、ゲストスピーカーのお話を聴く。お題は、新聞広告の舞台裏について。知らないことばかりで、へええ、ほおお、と感心しきりであった。
すっかり気のゆるんでいたところに、「次回、古本市のことでも話してみない?」とお声がかかってびっくりする。あんまりにもびっくりしたので、ついうっかり承諾してしまう。はて、なにを話したものやら。
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午後、助っ人(ボランティアスタッフ)さんの手をお借りして、先日印刷したチラシの山を折る。13名の方がお手伝いに来てくれたのだけれど、それでもすべて折るのに1時間半ばかりかかった。
たかが1時間半、されど1時間半。たとえば大学の授業1コマ分、延々チラシを折りつづけることを想像してみてほしい。なかなかどうして、骨の折れる作業なのである。せっかくのお休みにわざわざ時間を割いて集まり、牛乳瓶、あるいはジャムの空き瓶を片手に、黙々とチラシを折りつづけてくれた助っ人さんたちの勇姿は、きっと忘れまい。
散会後、さっそく折りあがったチラシを手に、自転車で町をめぐる。あちこちの店にチラシを置いてもらうのである。谷根千のひとたちはほんとうに心安くて、チラシを置いてくださいと頼んで断れたことは、皆無に等しい。おかげで、日の暮れるころには、自転車のカゴはからっぽになった。
ところで、チラシ折りの必須アイテム(と私が信奉するところの)牛乳瓶だけれど、最近とんと見かけなくなった。自動販売機はもちろん、スーパーの店頭からも姿を消し、頼みの銭湯ですら、最近は紙パックかペットボトルが主流になってきた。
そんなわけで、チラシ折り大会の直前、私たちは牛乳瓶難民の気分を味わった。代替品となりうる瓶を探してスーパーをさまよってみたものの、にぎるのに程よい太さの瓶は、みな底に滑り止めの波型加工が施されていて、使い物にならない。これでは紙にギザギザの跡がついてしまうのである。
あの、つるりとやわらかい曲線を描き、手によく馴染む牛乳瓶は、いったいどこへ消えてしまったのだろうか。
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途中で眼科へ行ったほかは、日がな一日、古本市の準備に追われる。ほんとうはもっとぱっぱっと片がつくようなことなのだろうけれど、いつまで経っても文明の利器をつかいこなすことができない私の手にかかると、恐ろしく時間を食うのである。
恋人はよその町のお神輿をかつぎに行き、夜遅くなってからへべれけになって帰ってきた。年男でもないのに、最近やたらお祭りづいている。
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くちびるに熱の花のようなものができた。遊びすぎたたたりか、あるいは昨夜遅くまでデザイナーさんと打ち合わせをしていたせいか。
ともかくそれでもめげずに、朝から浅草橋のシモジマまでSRを飛ばして、古本市で使うチラシ・ポスター用紙を買う。いつも行く6号館に置いてある分だけでは足りず、さらに5号館、馬喰町店の在庫まですべて買い占める。
チラシ用紙だけで計13束。枚数にして6500枚。これがかさばるし、腰が抜けるほど重いのである。
手ぶらで買物に来てしまった例年の反省を活かして、今年はリュックをふたつ持参した。13束のチラシとポスター用紙を、このリュックふたつと紙袋ひとつに分け、まずリュックAを恋人がおなか側に抱え、つづいてリュックBを私が背中に背負い、最後に紙袋をふたりの間に置く。そうして慎重にSRを運転してもらって、印刷室まで運んだのであった。
それから怒涛の印刷攻め。ポスターはともかく、チラシは両面印刷なので、印刷機から吐き出されてばらばらになったものを、ひっくり返してきちんとそろえ直し、もう一度印刷機に通さなくてはならないのである。けれど、そこは3年目。さすがに慣れてきたらしく、計3時間で無事にすべて刷りおえた。
インクが乗って、さらに重さを増したチラシの束を、ふたたびえいやっと抱えて、実行委員会メンバーの古書店へ預けた。そうして身軽になると、シモジマへ引き返し、その他必要な雑貨を買いそろえて、ようやく帰路についたのだった。お昼ごはんも食べずに活動していたので、家に帰りついた途端、どっと疲れが出る。
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恋人と膝をつきあわせて、チラシ及びポスターの内容を考える。一旦決めてしまったあと、しばらく時間を置いて、もう一度たしかめる。そしてデザイナーさんに送る。順調にことが運べば、例年より1週間早く完成する予定である。
午後、2日に生まれたばかりの第3子を抱いて、次兄家族が遊びに来た。産着に埋もれてしまいそうな、小さな小さな女の子。これで4人の孫を持つおばあちゃんとなった母が、張り切って中華風の鶏そばをつくり、家族みんなで食べた。あぁ、私ももう4人のおばさんである。
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明日中に古本市のチラシの中身を完成させなくてはいけないので、イベントの最終調整などに追われる。ふとした思いつきで、ずっと抱えていた懸案事項に片がつき、ほっとする。
寝る前に、『サン・ジャックへの道』を観る。美しいフランス田舎町の風景にうっとりしながら、ときどきはさまれる風刺にくすり。そしてお約束ながら、最後はほろり。旅情をかきたてられる映画であった。
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お昼前に、先日ご紹介いただいた方と会って、お寺で打ち合わせをする。薄謝しかお渡しできないことを詫びると、「こうして色々な方と知り合うのが楽しくてやっているようなものですから」と、さらりおっしゃってくださる。「私たちもそうなんです!」と、思わず言葉に力が入ってしまった。
またひとり、思いを共有できる方と知り合って、ほんとうに光栄である。楽しいことができそうな予感に、わくわくする。
帰ってふたたび仕事。なんとか日暮れ前に仕上げると、かしまし娘たち(S、F、Yちゃん)に会いに行く。5月に生まれたばかりの赤ん坊を抱えるSちゃん宅に集まり、夫の帰宅を待ってから、4人で駅前の繁華街へ繰り出して、お酒を飲んだ。
私たちは中学時代からのつきあいだけれど、齢を重ねるごとに、みごとに話題が変わってきていることを実感する。あのころの話題といえば、好きなアイドルや期末試験のことなんかで、振り返ってみればどうだっていいように思えることばかりなのだけれど、それでも当時の私たちにとっては、もう生きるか死ぬかというくらい重大な悩みだったのである。それが今では、仕事や生活、これからの人生設計についてなど話しているのだから、時の流れというものは不思議である。
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起きてすぐパソコンにむかい、仕事。今回いただいた仕事は、通常の倍のボリュームがあるものなので、なかなか手ごわい。(その分、原稿料も倍ではあるけれど)
古本市のチラシ・ポスター制作を手伝ってくださるデザイナーさんと打ち合わせをするため、夕刻、六本木ヒルズへむかう。まっすぐヒルズに行くだけではつまらないので、溜池山王で地下鉄を降りて、歩く。
タモリ倶楽部よろしく、坂めぐりをしよう、と恋人と申し合わせていたのだけれど、おもしろそうなものを発見するとすぐ道をそれてしまい、途中から申し合わせ事項のことはすっかり忘れてしまった。でも楽しかったので、よしとする。
ヒルズの手前で、どこかで見たことのある顔にぶつかる。ちらと目の合ったその顔は、とある映画に主演していた、あの役者さんのものである。冴えない役どころの多いひとだけれど、画面で観るよりずっと精悍で、すっきり引き締まったからだをしていた。
それからヒルズ内の居酒屋で、1年ぶりに会うデザイナーさんと打ち合わせをする。前回とはまた違う印象のものができあがりそうで、私たちも楽しみになる。
けれどよくよく考えれば、チラシ制作に入るということは、その前にイベントの詳細をすべて決定しなければならず、中途になっているあれやこれやに、きっちり片をつけなければならないということでもある。飲んだはしからすぐ醒める。
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無謀にも、ある世界の第一人者と呼ばれる方に、古本市へのご出演をお願いしてみる。すると「私は無理だけど、せっかくお声をかけてくださったので」と、ご親切に別の方を紹介してくださった。ほんとうに、ありがたいことである。
夕刻、仕事を中断して、恋人と上野精養軒のビアガーデンへ行く。涼風に頬なでられながら、過ぎ行く夏にしみじみ思いを馳せる。今日から9月。
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知らぬ間にまた行き違いの生じていたことが発覚する。昨日の浮かれた気分が一転、ぐったりくたびれた気持ちになったけれど、これも人生勉強と前向きに考える。
夜、空が壊れてしまったみたいに雨が降る。ここのところ、毎日こうである。雨の音を聞きながら、録画しておいた『舞妓Haaaan!!!』 を観る。さすがにテンポよし。あれだけのセリフを噛まずに、大真面目に演じきる阿部サダヲは、立派な役者はんどす。
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恋人のバイク、SR400を車検に出す。2年前にお願いしたところが、とても親切だったので、今回も同じところにお願いする。
それから一日仕事。少し特殊な依頼で、コンセプトがつかみづらく、なかなかよいコピーをひねり出せない。パソコンの前でうんうんうなっていると、今度は古本市をめぐってちょっとした齟齬が生じていることが発覚し、そちらの対応に追われる。電話で丁寧に説明したものの、真意が伝わったかどうかわからず、もどかしさを残したまま受話器を置く。
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早起き生活3日目。いよいよ明日からはじまる夏旅に備えて、あれこれ仕度を整える。すでに楽しい。歌いながら小躍りしたくなるほど、楽しい。
夕刻より、千駄木にて、古本市の決起集会をする。私たちの呼びかけに、思いのほか多くの方が応えてくださって、楽しい会となった。近所の居酒屋に場所を移して2次会ののち、「明日は早朝から運転なので」と断って、早めにお暇させてもらう。
ガソリン、荷物の最終チェックをし、11時には布団に入る。
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恋人の部屋に泊まって勝手が違ったのか、ついうっかり二度寝をしてしまい、起きたらもう正午。あわてて朝食とも昼食ともつかぬごはんを食べ、谷中へ。先日入籍した知人のために、ふたりのお気に入りの店で心ばかりの贈り物を買ってプレゼントする。どうぞ末永くお幸せに。
それから古本市の用事を済ませ、隣の原っぱでしょうがの辛味がきいた手づくりジンジャーエールをいただいて、知人の子どもと遊ぶ。遊ぶといっても、私は、人間ジャングルジムと化した恋人が、きゃあきゃあ叫びながら果敢に挑んでくるちびっこの相手をして汗だくになっているのを、笑って見ていただけなのだけれど。
近所のインドカレー屋で夕ごはんを食べたあと、腹ごなしに散歩をする。なにか予感があって、「しばらく休みます」とだけ貼り紙をしてずっと閉めたきりになっている銭湯を観に行き、思わず「あっ」と叫んでしまった。
そこにはただ、だだっ広い更地が広がっていたのである。破風屋根の立派な建物も、まっすぐ空に伸びる煙突も、神隠しにでもあったかのようにかき消えている。あ、あ、あ、と言葉にならない私の声ばかりが、夏の夜気にむなしく呑みこまれていく。
虫の知らせとはこういうことかと、ひどく残念な気持ちで思う。平成の世には珍しく、いまだに薪で風呂を炊く銭湯であった。
景気づけに、タランティーノの『デス・プルーフ』を観る。ぐずぐず、はらはら、のち、大笑いという映画。まるで展開が読めない。まさかの結末には、文字どおり腹を抱えて笑ってしまった。これからしばらく、私と恋人の間で、「イエー!」という雄叫びが流行りそうである。
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古本市関連の大切な用事があって、千駄木へ出かける。またひとつ進展。これで開催日がほぼ固まった。
夜は野菜たっぷりの冷やし中華をつくって食べる。にんじん、きゅうり、かいわれ、しそが山盛りになった、ほろ苦い大人の冷やし中華である。
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今日も朝から谷根千へ。知人に誘われて、上野桜木の「ねこじゃらし」まで足を延ばし、ランチをご一緒した。たった500円で一汁四菜、デザートつきのお膳がいただけるのである。さらにマイ箸を持参すると、一品おまけの大盤振る舞い。炊きたての古代米のおいしいことといったらなかった。
それからさらに2時間ほどあちこちをめぐる。古本市の準備も少し前進した。
それにしても暑い。ただ立っているだけで汗がにじみ、ちろちろからだを伝う。そういえば去年も一昨年も、こうやって汗だくになりながら自転車で町をめぐったなぁと思い出す。ふと気づけば、私にとっての季節の記憶は、この町の風景と分かちがたく結びついているのだった。
夕方、加藤千晶さんのライブを観に、吉祥寺へ行く。まずは知人に教えてもらったカフェで腹ごしらえ。下戸の私は、キール一杯でふうわりいい気分になって、ころころ笑いながらライブ会場を目指した。
ライブは、「あじさいの人」という曲からはじまった。イントロの最中、隣に座る恋人が誰かに「こんにちは」とうしろから声をかけられた。振り向けばそれは加藤千晶さんご本人で、真っ白いあじさいを一輪、少しはにかみながら恋人に手渡して、ステージにのぼっていった。
加藤千晶さんのライブを観るのは、春につづいてこれが2度目。前回が3人編成だったのに対し、今回は7人編成の大所帯で、ステージいっぱいに楽器が並べられ、あっちからこっちから予期せぬ音が飛び出してくる。その色とりどりの音に弾かれるようにして、からだがリズムを刻みだす。楽しい。本当にあっという間の2時間半だった。
ライブがはねたあとは、その場に居合わせた知人数名と終電間近まで飲んだくれた。帰りに「明日、谷中にアラーキーと田中泯が来るよ」という、すごい情報を得る。これはなんとしても行かなくては。
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バイクの給油に行って、ガソリンの高さに目玉が飛び出るほど驚く。少しでも安いところをと、わざわざセルフサービスのスタンドまで足を延ばしているのに、それでもレギュラーガソリンが1リットル175円もする。
私たちのどうにもできないところで世界は動いているのだなぁと、無力感に襲われる。物申したいことはたくさんあるけれど、世の中の仕組みが複雑すぎて、いったい誰になにを申し立てればいいのかさえわからない。
それから自転車に乗り換えて、谷根千に出かける。また今年も、秋の古本市にむけた準備がはじまるのである。
今日は初めて、乃池さんの穴子寿司をいただいた。日頃のお礼も兼ねて、恋人と一折ずつ。ふっくら香ばしく焼きあがった穴子は、口に入れた途端にほろほろほどける。あぁ、なんという贅沢。こんな若輩者が言うのもおこがましいのだけれど、とてもおいしかった。
帰ってから、昨日に引き続き、恋人の仕事を手伝う。2日目にして早くも倦む。
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久々の取材。初めて組むディレクターさんで、勝手がわからず緊張した。取材後、打ち合わせと称して、カメラマンさんとともにお茶をご馳走になってから帰る。
恋人の帰りを待って、キムチ煮こみうどんをつくって食べたあと、古本市の反省会に顔を出す。初めのほうこそ真面目に意見を交換していたものの、お酒がすすむにつれて、話はだんだんあらぬ方向へ。そして本棚の隙間でおでんをつつきながら、何時間も楽しく飲んだくれた。
その場にいた半数が、椅子や床にふせって、夢うつつをさまよいだした深夜3時頃になって、ようやくお開きとなる。うちひとりは、ふらりと外に出て行ったまま戻らず、心配になって様子を見に行ったら、あろうことか歩道に身を横たえていたから驚きだ。
驚いたことといえば、もうひとつある。あるひとが、買ってきたばかりの日本酒を開けようとしたところ、瓶とふたの隙間からしゅーしゅー泡が漏れ出した。まさかまさか、とみんなの目がそちらにむいた途端、ふたがぽおんと飛んで、まるで噴水のように瓶から日本酒が吹き出したのである。
あ、と言ったきり、瓶を持った当人も含め、その場にいた誰もが固まった。そして噴水のおさまるのを、身じろぎもせず、まさに呆気にとられて見つめていた。それは一幅の絵のような、とても静かな光景だった。
噴水は瓶の中身を3分の1ほど押し出したところで、ようやく止まった。(繰り返すけれど、これは日本酒である。シャンパンではない。)みんなの笑い声が弾ける。なんだかひどく貴重なものを見た気分になった。
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古本市weekの最終日。予想よりも仕事が進んだので、恋人と谷根千の町をまわって、イベントをはしごした。
まずは、スタンプを集めた台紙を持っていくと、ワインをサービスしてくれるというイタリアンレストランで昼食をいただく。供してくれたカリフォルニア産の白ワインは、すっきり優しい舌触りで、トマトベースのパスタにもよくあった。デザートまでおなかにおさめて、幸福な気持ちで青空号をこぐ。
それから、町のあちこちで行われている展覧会を、3つ見てまわった。そのどれもが、知り合い、もしくは知り合いの知り合い、という風にゆるくつながっていて楽しい。今回新たに、あっと驚くようなつながりを発見して、あらら悪いことはできないわねえ、と笑いあった。
それにしてもいいお天気。どうして3日前にこれだけ晴れてくれなかったのかと恨めしく思いながらも、この空気を満喫したくて、久々に恋人のSRに乗せてもらう。鮮やかな緑に彩られた内堀通りを一周し、ついでに恋人が教鞭を執る大学の前を通ってもらって、帰る。お天道さまに誘われて、すっかりのんびりしてしまった。
で、仕事。根をつめてパソコンにむかったら、日付が変わる直前に仕上がった。やればできるのだ。なかなかやろうという気にならないことのほうが問題なのだけれど。おとついの絶望的な気分を思い出して、ふふんと鼻で笑った。
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古本市2日目。今度もまた、昨日買ったばかりのトップス(安いほう)を着てみる。そうでもしなければ、気分が盛りあがらない。なにしろひどい雨なもので。
自転車に乗るのをあきらめて、徒歩でまわる。雨だからといって、別段大きな混乱は起こらなかったけれど、会う人会う人、みんなどこか消耗した顔をしていた。お天気のことゆえどうしようもないのだけれど、申し訳ない気持ちになる。途中で雨がやみ、すわお天道さまが拝めるのかと思いきや、またぽつりぽつりと降り出したりして、なんとも嫌な空模様。
それでも古本市は楽しかった。1日目に12冊も買ってしまったくせに、さらに14冊も買ってしまった。それに手作りのブックカバーを足しても5000円に満たないのだから、本当にみなさん良心的だ。回を重ねるごとに、箱のディスプレイや本の見せ方(あるいは魅せ方)も凝ってきて、とても勉強になる。来年あたり、私たちも箱を出したいねと、恋人とひそひそ言い合う。
半分ほどまわったところで、急遽来られなくなったメンバーに代わって、ふたりで賞を出すことになる。それから終了時間までさんざん悩んで、恋人と音楽の趣味がぴたり一致した箱に差しあげることに決めた。賞品は、打ち上げイベントにいた人だけの秘密。
そういえば今日は、ふたつ驚いたことがあった。
ひとつは、卒業以来ずっと会っていなかった高校の同級生に会ったこと。違ったらどうしようと思いながら、勇気を出して声をかけてみたら、やはりMちゃんその人だった。どうやら彼女の恋人が古本好きで、引っ張ってこられたらしい。
ふたつめは、先日D坂シネマのときにお邪魔した、映画保存協会の蔵で起こった。突然ばりりと大きな音が響いたかと思うと、天井からにょっきりひとの足が突き出したのである。築100年にもなる蔵のこと。2階にいたひとが床を踏み抜いてしまったらしい。
その真下に置いてあった箱に、床板の一部とほこり、つづいてなにかのコードが降りかかり、きゃああと大きな悲鳴が響きわたった。幸い、床を踏み抜いた当人がおっこちてくることはなく、ケガ人も出なかった。だからこうして笑い話として公開できるけれど、一歩間違えれば大惨事になるところだった。
あとになって、ぽっかり空いた穴を下からのぞいてみると、2階の窓から風にそよぐ公園の緑が見えた。それはなんとも平和な光景であった。
夜はぐずぐずと3次会まで。家に残してきた仕事のことを思うと、ちっとも酔っ払えなかったけれど、ベテランデザイナーさんからうかがった、表紙の名前の位置を定めるだけで4日もかかった話など、興味深い話がたくさんあった。
よく食べ、よく買い、よく歩いた一日。たぶん8~9キロは歩いたと思う。文句ひとつ言わず、市を盛りあげてくださったみなさまに、心から感謝。
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今日から5月。私の誕生月。
一日中家にこもって仕事をする。最近、好き勝手しすぎたので、山のように仕事が積みあがっている。その山に、にじりにじり分け入っていく。
寝る前に、先日取材した古本市関連の記事を、ネット上に公開する。唯一、記名で書いている記事である。
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1947年に撮られた『20年後の東京』という映画が観たくて、恋人とふたり、映画保存協会の蔵で開かれたD坂シネマ・アンコール上映会に行く。
主催者の説明によると、傷の入った16ミリフィルムは、その価値が理解されずに捨て置かれていたのを、誰かが拾いだしてきたものであるらしかった。そのおかげで、こうして運よく日の目を見ることができたわけだけれど、おそらくこれと同じような価値を持つフィルムのほとんどは、すでに消失してしまっているのだろう。空襲で一面の焼け野原となった跡に、バラック小屋が立ち並ぶ東京の光景を眺めながら、それをつくづく口惜しく思った。
『20年後の東京』があまりにもおもしろかったので、『東京タワーはわが息子―内藤多仲博士を囲む』『ムカシが来た―横浜市長屋門公園古民家復元の記録』と、さらに2本続けて観た。私たちの隣では、若い大工さんが食い入るように画面を見つめ、なにごとか熱心に書きつけていた。
夕食をとったのち、今度は馴染みの古書店で開かれた加藤千晶さんのライブへ行く。「ピタゴラスイッチ」と歌っている、あの声の人である。カーテンのむこうからひょっこり現れた姿を見て、私はいっぺんで加藤さんが大好きになった。佇まい、手や足の運び、表情、声、そのすべてに人柄がにじみでていて、次々とシャボン玉が弾けていくような明るい歌に、ぴったり似合っていた。
本棚の隙間からのぞき見る楽しいライブが終わって、楽器を片づけたあとのスペースで、打ち上げが開かれた。いつものように、私たちも図々しくお邪魔させてもらう。なんだか最近、仕事そっちのけで飲んでばかりだ。たまにはそんなときがあってもいいか。
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古本市1日目。先日買った麻のワンピースを着てみる。鏡を見ながら、うっかり地面に腰をおろさないようにしなくてはと、自分を戒める。
よそゆきの格好をした恋人とふたり、青空号と夕やけ号に分乗して、それぞれ担当の場所へむかう。出店者の準備がととのい、時間どおりに市が始まったのを見届けてから、ふたたび合流。デジタル機器に記録を焼きつけながら、ひとつひとつの会場をまわった。
そうしていると、あちこちで懐かしい顔にぶつかる。つい先日会ったばかりの人もいれば、半年ぶりという人もいて、なんだかひどく嬉しくなる。それで気が大きくなったのか、財布の紐もすっかりゆるみ、予想をはるかに上まわる数の本を買ってしまった。
でも、どこの場所で、どんなことを話しながら、誰から買ったか、それを手に入れた瞬間の記憶が宿った本というのも、なかなか貴重なものである。
終わりの近づいてきたころ、結婚式のために岡山から上京してきた友人も来てくれた。時間がなくて、たいしたもてなしができなかったにもかかわらず、「すてき」と繰り返してくれる。そうなの、すてきなの、とまるで自分が褒められたように威張ってしまうのは、きっと私がこの町を本当に好いているからだと思う。
すべてが終わったあと、実行委員とゲスト、古本市を手伝ってくれた助っ人さんで、打ち上げをした。成り行きから、自分の仕事と夢について話したのだけれど、出版業界に造形の深い人たちは、こぞってその厳しさばかり口にする。でもこれまでにも同じことをさんざん聞かされてきたので、免疫がついてしまい、かえって動じなくなってしまった。ここまできたら、もういっそ思うまま生きてみるしか道はないのだった。
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昨日に引き続き、Uさんのお手伝いをする。といってもいつもの雑務ではなく、今日は古本市の参加企画のひとつとして、ゲストを招いての内覧会が開かれ、私はその受付を担当したのだった。ヤスデとゴキブリがペットという、一風変わった女性のつくりだす一風変わった作品を、Uさんとゲストがゆるくしゃべりながら紹介するという企画で、前々からそのゲストの方を慕わしく思っていた私は、3人のおしゃべりを背後から楽しく聞いた。
内覧会が終わってから、打ち上げと称して飲みに行くのに、私もお邪魔させてもらう。ちょうどゲストのSさんが私の前に座ったので、直接話す機会に恵まれた。そこには女ばかり集まっていて、なんだか久しぶりに「女」らしい話題に花が咲いた。断っておくけれど、女は男以上に下世話な話が好きなものなのである。
最後に図々しくSさんの名刺をちょうだいして帰る。
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大学で都市社会学を教える恋人に頼まれて、パソコンに保存してある写真を、場所ごとに整理しなおした。「上野」だとか「渋谷・原宿」だとか「東京・有楽町・銀座」だとかいう具合に。
それはそれは膨大な量で、すべて整理しおわるまでに、数時間を要した。なかでも特に多かったのが「谷根千」の写真。すっかり容量の膨らんだファイルは、開くまでに時間がかかる。これだけよく歩きつくしたなぁと、ふたりの歴史をしみじみ思い返した。
夜は、まさにその谷根千で、いよいよ今週末に迫った古本市の会議に出席する。増刷したチラシを折りながら、当日の流れを再確認していたのだけれど、研究会に行っていた恋人が遅れて顔を出すころには、ビールやせんべいがふるまわれ、ただの飲み会になっていた。
それから、折りあがったチラシを運ぶついでに、事務局となっている古書店へ顔を出すと、そこでもまた酒盛りがひらかれていて、「まぁまぁ一杯」と誘われるまま、お相伴にあずかった。高尚な話(1割)から尾籠な話(9割)まで、知った顔、見知らぬ顔と愉快に話す。じゃあまた、とほろ酔いで帰路についたときには、すでに夜中の1時をまわっていた。
おかげできちんとした夕食を食べそびれてしまったし、明日に仕事も残してしまったけれど、とても楽しい時間だった。私たちはこの町とひとに、たくさんのものをもらっている。
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昨日に引き続き、「大家さん紹介」の取材。今日も2ヶ所をまわり、それぞれの場所でこれまたおもしろい話を聞かせていただいた。
こうして色々なひとの人生を垣間見させてもらうと、とにかく自分の思うように生きてみたらいい、と妙に鷹揚な気分になってくる。それはひどく危険なことでもあるけれど、だからこそおもしろいのかもしれなかった。
一旦帰って夕食をとったのち、今度は古本市の助っ人集会に顔を出す。助っ人さんたちが集まって分担を決めている間に、私たちは隅のほうでひたすら景品を作る。ハサミを持ったり針を持ったり、家内制手工業のように、こつこつと、ひとつずつ、作りあげていく。
私も恋人も仕事を残してきたので、飲み会は辞退して帰った。古本市の準備は思う以上に大変で、時間も労力も使う。けれどそれ以上に、得るもののほうがずっと多いように思えるのだった。
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古本市のブログに掲載する「大家さん紹介」の記事を書くために、千駄木へ取材に行く。恋人がカメラマンで、私がライターという名目になっているけれど、ときには役割を交代することもある。
今日は2ヶ所をまわり、そのどちらでもとても興味深い話を聞かせていただいた。おひとりは、蝶の写真を撮って歩くという趣味が高じて、とうとう本を1冊書きあげてしまったというし、もうおひとりのほうは、「掃苔」(墓参り)が趣味で、そこにどんな人が眠っているか思いめぐらせるだけでなく、実際に調べあげてしまうという。
それで、へえー、ほうー、と感心してばかりいた私と恋人も、なにかそういう特別なことができないかと、帰り道でさんざん考えた。けれど残念ながら、のんべんだらりと日々を送ってきた私たちには、なにひとつ特別なところなどないのだった。
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月末に行われる古本市のチラシを配るため、自転車に分乗して、谷根千をまわる。実を言うと、私と恋人も実行委員に名を連ねているのであった。
新しくできたお店にあいさつをしながら、馴染みのお店にも顔を出す。この2年でずいぶんと知り合いが増え、街ごとぐっと親しくなった。古本カフェでお茶をするついでに、『装丁の仕事160人』なる本を買ったら、ここにも知り合いをふたり見つけてびっくり。世間は狭い。
それから、へび道に最近できたベーグル屋で2種類のベーグルを買い、昨年の古本市でお世話になった根津のイタリアンレストランで、カフェラテをひとつ買い、上野まで足を延ばした。不忍池に浮かぶボートを眺めながら、ティータイムと洒落こむ。家族連れのこぐ白鳥のてっぺんに、すました顔でかもめが一羽、とまっていた。
夜、ストレス発散という名目で、初めて恋人とカラオケに行く。懐メロばかり(「恋の奴隷」や「悲しき口笛」、「可愛いベイビー」など)1時間半歌って、雨のなか、ほくほくした気持ちで帰った。
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昨日に引き続き、Uさん宅にてDM発送の準備。アドレスブックの情報を訂正したり、印刷されたラベルや切手をどんどん貼りつけたりして、夕方まで働いた。夜は月末に開かれる古本市の会議があったのだけれど、疲れに負けて欠席してしまう。
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